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北枕
【東京雑学研究会編】


§日本人が「北枕」など北を嫌がるのはなぜか?

日本人日常生活は、迷信、縁起かつぎ、タブー呼ばれるものでけっこう左右されている面がある。あるものは生活の知恵と言ってもいいような理にかなったもの、また、あるものはなぜだか理由のはっきりしないもの。いろいろ混ざり合って、日常生活円滑にしたり、あるいは不便なものにしたりしているかもしれない。
そのようなものの中に、「北」を嫌がる「北忌み」、つまり、北の方角に対するタブーがある。例えば、「北枕で寝るな」とか、「北に向かって着物を裁つな」「北に向かって髪を結うな」などである。
「北枕」を縁起が悪いと考えるのは、仏教の影響によるものだ。「大般涅槃経」には、お釈迦様が亡くなられたときの様子が、「頭を北方に枕し、足を南方に指す」と書かれている。また、古代中国以来、東アジア一帯には北斗七星信仰があり、死者を北枕にして葬っていた。このような風習と仏教的な考え方が混ざりあって、「北枕」が嫌われるようになった。
「洗濯物を北向きに干すな」というのは、日陰になるから避けよと言っているのではなく、明らかに「北」に対してネガティブな縁起をかついでいる。「ヤカンや急須口を北に向けると、女が強くなる」とか「北側に風呂場や流し場、便所をつくると病が絶えない」というのもある。
陰陽五行説によると、「北」は「陰」や「水気」を表している。したがって、水に関係あるものを北に向けると、「陰」の性格がさらに強くなり、災いにつながると解釈されているようだ。
「神仏は、北や西向きにしてはならない。」南向きの仏壇には光が十分に入り明るく、神仏も気持ちよかろうというもの。また、東向きにすれば、拝む人が西方浄土方向を向くので良いという。
「かまどの焚き口を北に向けるな」というのは、「北」に対するネガティブな縁起かつぎであろうが、かつての日本人が火を神聖視して、大切にしてきたことを思うと、火が穢れることを嫌ったのかもしれない。このように、仏教的なもの、東アジア日本の土俗的な信仰、陰陽五行説などが入り混じって、日本人の「北忌み」を支えているようだ。




東京書籍
「雑学大全」
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