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人間国宝
【東京雑学研究会編】


§人間国宝はどんな人がなるのか?

人間国宝」という言葉をよく耳にする。「国宝」は読んで字のごとく国の宝で、お寺や博物館などで目にすることができる、歴史的、芸術的に価値の高い「もの」である。すなわち、「重要文化財」と呼ばれるものがそれだ。よく知られているものに、奈良・正倉院の仏像や楽器がある。
では、人間にして国宝とはどんな人たちなのか?「もの」である国宝のほかに、伝統的、芸術的に高い価値を持つ「わざ」も国宝に指定された。そんな「わざ」を持っている人々のことを「人間国宝」と呼ぶ。正式には「重要無形文化財保持者」という。
具体的には芸能(歌舞伎、能楽、舞踊、音楽など)と工芸技術(陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形など)の二つの分野から選ばれる。その目的は、それら価値が高いと認められた伝統的技術、技能の保護向上と将来への継承である。
「わざ」を極めるには長い修業が必要であるから、「人間国宝」に認定された人々は、たいていが高齢者である。何十年もかけて伝統から多くのことを学び、独自の工夫を凝らしてきた人々だ。
一九五〇(昭和二五)年以来、工芸技術の分野で「重要無形文化財」に指定されたのは全部で一四五件。そして、その保持者として認定された人間国宝」は、全員で一三二名である。落語の桂米朝さんや歌舞伎中村鴈治郎さんの名前は、私たちになじみのあるところであろう。
しかし、「人間国宝」に日々の特別な待遇が用意されているわけではない。陳列ケースの中の国宝よろしく大事にされ、ただ座っているわけにはいかないのである。むしろ、さらに自分の「わざ」を磨き、すばらしい作品を一生作り続け、後継者養成する義務が生じる。そのために国から年間二〇〇万円の特別助成金が支給されるのだ。ほかには、「わざ」の公開や記念事業に補助が行われる程度である。主役は「わざ」そのものなのである。




東京書籍
「雑学大全」
JLogosID : 12670737