トルコ（政治・経済）

ケマル大統領は1924年憲法を制定し，主権在民，三権分立，政教分離を主要原則とし，「内に平和，外に平和」のスローガンのもと近代的，西欧的国家建設を進めたが，この思想は現在の政治にも生かされている。大統領が最高権力者で，一院制の議会を持ち，政党は数多く，連立政権が多かったが，2002年11月の選挙で連立与党がすべて消え，結党１年余りの公正発展党により15年ぶりに単独政権が発足した。しかし，キプロス紛争への介入，国内のクルド人による独立闘争など課題も多い。NATOの加盟国であり，欧州東南部防衛の要衝にあるが，イラク戦争では米軍の駐留を認めなかった。キプロス問題では国連案に一時合意したものの，再び決裂した。05年10月，EUは加盟交渉を開始した。しかし，キプロス問題が未解決であるほか，イスラム教徒が多いこと，6,800万もの人口であること，所得水準が低いことなどから，EU内には加盟に否定的な見解が根強く，加盟までの道のりは険しい。資源は乏しいが絨毯，キリムなどの手工業，農業，観光業が主産業である。急速な工業化政策の行きすぎ，さらに石油ショックから慢性的なインフレが進行して経済は悪化したが，生産活動の活発化，高い消費水準などから回復基調にある。

東京書籍 「世界各国要覧」 JLogosID : 14050307