ルーマニア（政治・経済）

戦後ルーマニアは共産党一党独裁の社会主義国家としてチャウシェスク大統領（党書記長）を最高指揮官とする，共産主義諸国の中でも最も厳しい思想統制の国として知られてきた。しかし1989年12月，西部の都市ティミショアラで，ハンガリー系住民の強制移住に反対する暴動が発生，大統領は国外に脱出しようとしたが逮捕され，死刑となった。91年国民投票で新憲法を制定，大統領を最高権者として三権分立の民主国家として再出発した。政府は，汚職対策，共産主義政権下において押収された財産の返還を推進し，また，少数民族にかかわる法律および制度の確立などを行っている。外交の基本は欧州への復帰を果たすことで，西欧諸国との関係改善に努め，EU，NATOへの加盟を最優先課題と位置づけ，2007年のEU加盟をめざしている。本来農業国であったが，80年代から急激な国の工業化政策が進められた。しかしチャウシェスク時代に疲弊した経済の建て直し，計画経済から市場経済への移行にともなう混乱から，同国の主要産業は軒並み大幅に落ち込み，経済の不振が続いた。現在，企業民営化，金融制度改善などを推進し，IMFなどの指導が効果を生み始め，輸出が増えてきている。

東京書籍 「世界各国要覧」 JLogosID : 14050758