スワジランド（政治・経済）

アフリカ53か国（2006年現在）中ほとんどが共和国となったのに対し，王国はモロッコ，レソトとスワジランドの３国である。ソブーザ２世は，61年間王位に就き，議会，立法，行政ともに絶対的な権力を持っていたが，1982年死去。その後王位継承をめぐり王族内で対立が見られたが，1986年ムスワティ３世が即位した。国政を支配していた最高評議会を解散するなど，新国王としての権力の確立を図ってきた。93年には20年ぶりに総選挙実施するも，複数政党制などの民主主義確立へは至っていない。2000年11月，ゼネスト，国境封鎖デモなどが相次ぎ，03年憲法起草委員会が憲法案を提出している。現実的な穏健外交政策。国連，AU，英連邦などに加盟。南アフリカの経済に大きく依存しているため同国との関係に細心の注意を払っている。黒人国としての立場から一応南アフリカ共和国の人権政策「アパルトヘイト（人種隔離政策）」を非難したものの，他方においては同国内に根拠を置く反南アフリカのアフリカ民族会議（ANC）やパンアフリカニスト会議（PAC）のゲリラ組織を再三にわたって摘発するなど，南アフリカの旧白人政府に協力を示すという複雑な姿勢をとってきた。南部アフリカ関税同盟（SACU），南部アフリカ開発共同体（SADC），東部南部アフリカ共同市場（COMESA）にも加盟。人口の80％が農業，林業に従事し，主要産物はサトウキビ，柑橘類，綿花，木材，パルプなどである。鉱物ではアスベスト，鉄鉱石，石炭などがある。またこの国は観光地として有名で，観光客は年々増えて外貨収入源としての比率を高めている。通貨単位はリランジェニ（複数形はエマランジェニ）であるが，南アフリカのラントと同価なため，レソトとともに南アフリカのラント経済圏に組み込まれ，輸出面では南アフリカが圧倒的優位を占めている。近年旱魃による食糧危機が頻発しており，エイズの影響による生産者の減少が状況を悪化させている。

東京書籍 「世界各国要覧」 JLogosID : 14051353