チャド（政治・経済）

大統領が最高権力者。1990年12月にハブレ大統領から政権を奪ったデビー元軍司令官は，91年自ら大統領に就任。96年には複数政党制での大統領選挙を実施するなど，民主化プロセスを進展させた。しかし，選挙での不正疑惑，野党関係者の拘束，反対勢力の選挙不参加など，多くの混乱が見られた。1998年南部の反政府武装勢力の「連邦共和国武装（FARF）」との停戦協定に調印，北部山岳地帯の反政府勢力「チャド民主正義運動（MDJT）」とは2002年和平合意したが，実施に向けた交渉は進んでいない。非同盟，反新植民地主義の方針を表明，フランスを中心とした西側諸国，近隣諸国と友好関係を築きつつある。リビアとは94年国境問題も和解が成立して善隣友好協力条約を結んでいる。台湾と外交関係を回復し中国と断交。またスーダンとの断交も表明している。主産物は綿花を中心とする農産物であるが，ウラン，金，ボーキサイト，鉄，さらに石油などの豊富な鉱脈が発見され，2003年，南部ドーバから隣国カメルーンのクリビ港に至る全長1,070㎞の石油パイプラインが貫通，日量10万バレルの石油の商業生産を開始した。今後25年間で年間20億ドルの石油収入が見込まれている。しかし，高水時にはわが国の四国の1.4倍にもなったチャド湖が，うち続く旱魃などにより大幅に縮小（35年間で20分の１に縮小したとの説もある），消滅の危機にある。近隣の漁民の生活にも影響が出ている。

東京書籍 「世界各国要覧」 JLogosID : 14051401