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落とす
【おと・す】


[他][サ四]さ/し/す/す/せ/せ


[1]落下させる。
[例]「ひさこの種をただ一つ、おとして置きたり」〈宇治拾遺・三・一六〉
[訳]「ひょうたんの種をたった一つ、落として置いた」
[2]勢いよく下らせる。(馬を)駆けおりさせる。
[例]「一の谷のうしろ鵯越(ひよどりごえ)にうち上がり、すでにおとさんとし給ふに」〈平家・九・坂落〉
[訳]「一の谷の背後の鵯越にのぼって、いよいよ(馬を)駆けおりさせようとなさると」
[3]なくす。失う。
[例]「◎扇(あふぎ)をおとして侍りけるを」〈玉葉・恋二・一四六一・詞書〉
[訳]「◎扇をなくしておりましたけれども」
[4](必要なものを)もらす。見落とす。
[例]「盲僧前(さき)のことをおとさず語りて」〈今昔・一三・一八〉
[訳]「視力を失った僧が、過去の出来事をもらさず(すべて)話して」
[5]逃がす。逃げ去らせる。
[例]「これは謀反(むほん)の輩(ともがら)をおとさじがための謀(はかりごと)なり」〈太平記・一〉
[訳]「これは謀反のやつらを逃がさないようにするための計略である」
[6](速さや数量などを)減らす。
[例]「御膳(おもの)召す御台のたけばかりをぞ一寸おとさせ給ひけるを」〈大鏡・公季〉
[訳]「お食事をおとりになるお膳の高さだけを、一寸(=約三(センチメートル))減らさせなさったのを」
[7](音の)調子を低くする。
[例]「琵琶(びは)をとりよせて、『衣がへ』をひとわたりおとして」〈狭衣・二〉
[訳]「琵琶を持ってこさせて、『衣更(ころもがえ)』(=催馬楽(さいばら)の曲名)をいちだんと調子を低くして」
[8]劣った状態にする。劣ったようにする。
[例]「南殿にてありし儀式、よそほしかりし御ひびきにおとさせ給はず」〈源氏・桐壺〉
[訳]「紫宸殿(ししんでん)であった(皇太子の元服の)儀式が、りっぱで美しかったというご評判に(比較して、光源氏の元服の儀式が)劣ったようにしないようになさる」
[9]((「貶す」とも書く))見下げる。侮(あなど)る。
[例]「人におとされ給へる御ありさまとて」〈源氏・若菜・下〉
[訳]「(女三の宮が)人に侮られなさっているごようすだからといって」
<10>攻め取る。陥落させる。
[例]「この城を大手より攻めば、人のみ討たれておとす事ありがたし」〈太平記・七〉
[訳]「この城を正面から攻撃すれば、人(=兵士)だけがうち殺されて(城を)陥落させることは困難だ」
<11>つきものを取り除く。病気を治す。
[例]「おこり心地をなむ久しくしてわづらひて、さるべき験者(げんざ)ども、おとしかねたりけるに」〈十訓・一〇〉
[訳]「瘧(おこり)の病(やまい)を長い間患っていて、相応の修験者(しゅげんじゃ)たちがつきものを取り除きかねていたときに」




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5082345