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園原
【そのはら】


下伊那郡阿智村智里,神坂峠の東麓にあり古くから伏屋の里とも呼ばれていた。園原と伏屋はともに歌枕として歌に詠まれている。「園原や伏屋に生ふるははき木のありとはみえてあはぬ君かな」(新古今巻11,坂上是則)の歌は,園原の伏屋に生えている帚木は遠くから見ればまさしくあるのだが,近よってみるとないという帚木伝説にもとづいたものである。また源氏物語の帚木の巻の「帚木の心を知らで園原の道にあやなくまどひぬるかな」と歌いかけた光源氏に,空蝉が「数ならぬ伏屋に生ふる名の憂さにあるにもあらず消ゆる帚木」と返した場面は,帚木伝説をもとに巧みに男女の心理を表現したものといえよう。帚木は,東山道筋にあった檜の老木とされる。伏屋は布施屋とも書き,天台宗の開祖伝教大師最澄が東国への布教のため弘仁6年東山道を通過した際,難渋する旅人のため私設の布施屋広極院を建て無料で供したという。世阿弥の謡曲「木賊」にもこの地が見える。また,薬師平の薬師堂は通称月見堂といい「とくさかるその原山の木の間よりみがきいでぬる秋のよの月」(夫木抄)と歌われた月見の名所とされた。金鶏伝説の残る長者屋敷,朝日松,姿見池,義経駒つなぎの桜などがある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7101593