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「正しいと確信したことは妥協せずにやり抜く」


【名言・格言者】
飯田亮(セコム株式会社取締役最高顧問)

【解説】
 飯田亮(いいだまこと)氏は、1933年、東京都に生まれました。1956年に学習院大学を卒業後、父親が経営する酒類問屋に入社しました。1962年、日本初の警備保障会社である日本警備保障株式会社(現セコム株式会社。以下「セコム」)を創業し、代表取締役社長に就任しました。現在、セコムは警備保障サービスに加え、損害保険事業や高齢者向け終身利用型施設の運営など、幅広い分野において事業を展開しています。
 冒頭の言葉は、「既成の常識や習慣にとらわれず、独自の判断力と強い実行力を持つことの重要性」を表しています。
 日本警備保障が誕生した当時、日本では安全に対する意識は高くなく、飯田氏が警備保障というサービスのメリットを説明しても、顧客の理解を得ることは困難でした。
 加えて、営業活動をさらに困難にしたのが「前金制」です。これは、3カ月分のサービス利用料金を前払いで顧客から徴収するもので、飯田氏が創業当時から提唱していたものです。飯田氏は酒類問屋で働いていたころ、売掛金の回収に苦労させられた経験がありました。また、独立したばかりの日本警備保障が発展を続けていくためには、どうしても迅速に資金を調達する必要がありました。このため、「商品やサービスに自信があれば、前払いも受け入れられる」という信念に基づき、前金制を取り入れたのです。
 その後日本警備保障に大きな転機が訪れます。1964年に開催された東京オリンピックの選手村や競技施設の警備を日本警備保障が請け負うこととなったのです。五輪組織委員会は、契約に際して「前金制などは前例がない」と苦言を呈しましたが、飯田氏はあくまでも妥協せず、前金制を認めさせることに成功しました。
 このような妥協のない実行は、揺らぐことのない独自の判断に支えられています。飯田氏は、起業を志した際、「人から後ろ指をさされない事業」を行うことを決意しました。1992年、セコム創業30周年に企業の理念をまとめた「セコムの事業と運営の憲法(セコム憲法)」を発表していますが、その中に「すべてのことに関して、セコムの判断の尺度は、『正しいかどうか』と『公正であるかどうか』である」という一節があります。セコムが提供するサービスの根底をなすものは「安心と安全」であり、その実現にはこの二つの尺度が不可欠となっています。そして、この理念は創業から一貫してセコムの中に受け継がれているのです。
 飯田氏は、次のように述べています。

「経営とは、創業の基本理念を、どんなに時代の環境が変わろうとも、一心不乱に貫き通すことだと確信しています」

 警備保障という、これまでなかった新しい業種を興して育てた飯田氏のおもねることのない強い信念が、この言葉にも色濃く表れているといえるでしょう。
【参考文献】
「『大企業病』と闘うトップたち」(大塚英樹、講談社、2001年8月)
「私の履歴書 経済人36」(椎名武雄、樋口廣太郎、稲盛和夫飯田亮安藤百福、日本経済新聞社、2004年6月)




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「経営のヒントとなる言葉50」
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