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「最大の問題は、明日何をなすべきかではない。『不確実な明日のために今日何をなすべきか』である」


【名言・格言者】
ピーター・F・ドラッカー(経営学者)

【解説】
 ピーター・F・ドラッカー氏は、1909年、オーストリアに生まれました。1931年にドイツのフランクフルト大学で法学博士号を取得し、1933年に英国に移住しました。以後、1939年に刊行した「経済人の終わり」を皮切りとして次々に著作を発表しました。1969年には「断絶の時代」を発表し、この作品が当時の英国のサッチャー政権が推し進めた国営企業の民営化政策に大きな影響を与えるなど、「現代経営学・マネジメントの祖」として世界中で大きな注目を集めました。その後、米国のニューヨーク大学教授、同クレアモント大学院教授などを務めました(2005年逝去)。
 冒頭の言葉は、「未来は、常に現在の意思決定の延長線上にある」ということを表しています。ドラッカー氏は、意思決定について次のように述べています。

「戦略計画は未来の意思決定に関わるものではない。それは、現在の意思決定が未来において持つ意味に関わるものである。意思決定が存在しうるのは、現在においてのみである」

 マネジメントは、一般的に「組織に目標を設定し、ヒト、モノ、カネなどの経営資源を管理して有効活用することにより、組織の力を最大限に生かして目標の達成を図ること」であるとされています。そして、戦略計画は、マネジメントにおいて「経営者の意思決定によって策定された、組織が目標を達成するための道筋」です。
 ドラッカー氏は、「戦略計画」と「未来の予測」を混同することの危険性について警告しています。「未来の予測」は、あくまでも現在の可能性を前提として成立するものです。とはいえ、前提となる現在の可能性は、企業活動により絶えず変化し続ける性質を持っています。未来は、あくまでも現在の結果であり、従って、効果的・合理的な戦略計画のための意思決定は、「効果的・合理的な“現在”の意思決定から生まれるもの」だといえるでしょう。
 そして、さらに重要なこととして、戦略計画は、成果に応じて変化するという連続した過程を持っているという点が挙げられます。これまで述べてきたように、過去・現在・未来は、それぞれが独立した存在ではなく、連綿とした継続性を持っています。従って、昨日の時点で「最も効果的・合理的」として行った意思決定であっても、今日になってみると思わぬ結果となっているといったことは、往々にして起こりうるのです。このような場合、過去の意思決定に対するこだわりを捨て、新たに生じた前提に基づいて再び意思決定を行わなくてはなりません。
 ドラッカー氏の言葉は、経営者に対して「常に、その時々の“現在”に基づき、何をなすべきかの意思決定を行う」ことの重要性を説くものだといえるでしょう。
【参考文献】
「マネジメント 基本と原則」(P・F・ドラッカー(著)、上田惇生(編・訳)、ダイヤモンド社、2001年12月)




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「経営のヒントとなる言葉50」
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