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「何が最善かを決めるのはユーザーです」


【名言・格言者】
ジェリー・ヤン(Yahoo!共同創業者)

【解説】
 ジェリー・ヤン氏は、1968年、台湾(中華民国)に生まれました。幼いころに家族とともに米国に渡り、後にスタンフォード大学に入学して電子工学を学びました。1993年、大学の同級生であったデヴィド・ファイロ氏とともにWebサイトを効率よく見つけて索引化するためのウェブディレクトリサービスを開発し、1995年にYahoo! Inc.(以下「ヤフー」)を設立しました。その後、ヤフーは世界にサービスを広げ、ポータルサイト(インターネットの入り口となる巨大なWebサイト)の代表的な存在となりました。2007年に同社のCEO(最高経営責任者)に就任し、現在は技術力の強化によってヤフーを新たに生まれ変わらせるべく、次世代プラットフォームやアプリケーションの開発など、数々の取り組みを精力的に進めています。
 冒頭の言葉は、「顧客が望むものを実現することこそが、事業の最も大きな目的である」ということを表しています。
 1995年の設立後、ヤフーは驚異的なスピードで成長を遂げました。この成功の背景にはインターネット自体の急速な広がりがありますが、ヤン氏は、成功の最も大きな要因として、同社が顧客(ユーザー)の満足度の向上を重視した点を挙げています。
 Webサイトの索引作成に際して、ヤフーの競合企業は、自動的にインターネット上のWebサイトから情報を収集するロボット(インターネット上の文書や画像などを周期的に取得し、データベース化するプログラム)を使用していました。しかし、ヤフーは人間の手によって索引を作成しました。ヤフーのサービスでは、サーファーと呼ばれる担当者がインターネット上のWebサイトを検索し、ユーザーが見たいWebサイトにすぐにたどり着けるように、Webサイトをカテゴリー別に分類していました。
 こうした方法は多くの時間と人的資源を必要としますが、そこから集められたデータを分析することによって、ユーザーがどのような情報を求めているかがより明確に分かります。そして、そのデータを基にして、ユーザーにとって最適な機能をさらに追加することができます。インターネットの爆発的な普及に伴い、2005年よりヤフーでもロボット検索を主体とするようになりましたが、サーファーという人間の手による情報の収集は、創業から現在に至るまでヤフーの大きな特徴の一つとなっています。
 1996年、Yahoo! JAPANの設立に際して、ヤン氏は来日して講演を行いました。その中で、ヤン氏は次のように述べています。

「ヤフーの理念とは消費者志向の『いい体験』を実現することです」

 インターネット上には膨大な量の情報が存在しています。ヤン氏は、ユーザーが有益な情報を容易に見つけ出せるようにすることこそがユーザーにとって重要であると考え、それをビジネスの目的としました。そこには、「ヤフーはあくまでもユーザーのためのメディアである」というヤン氏の理念が表れています。
 ビジネスにおいて、顧客のニーズを満たし、その満足度を向上させることが重要であることはいうまでもありません。しかし、時として、顧客のニーズよりも、企業側の論理や企業が置かれている状況などが優先されてしまうことがあります。ヤン氏の言葉は、そのようなとき、経営者に「ビジネスにおける顧客のニーズの重要性」を再度思い出させてくれる貴重なものだといえるでしょう。
【参考文献】
「なぜYahoo!は最強のブランドなのか」(カレン・エンジェル(著)、長野弘子(訳)、英治出版、2003年7月)




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「経営のヒントとなる言葉50」
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