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「決断の条件は、小心・大胆・細心」


【名言・格言者】
平岩外四(元東京電力株式会社社長)

【解説】
 平岩外四(ひらいわがいし)氏は、1914年、愛知県に生まれました。1939年に東京帝国大学(現東京大学)を卒業後、東京電燈株式会社(現東京電力株式会社、以下「東京電力」)に入社しました。終戦後、同社に復職した後は同社中興の祖である木川田一隆社長の薫陶を受け、1976年に同社社長に就任しました。また財界においては、1978年に経済団体連合会(現社団法人日本経済団体連合会)副会長に、1990年には会長に就任し、エネルギー分野のみならず、日本経済全体の方向策定に尽力しました(2007年逝去)。
 冒頭の言葉は「経営者は、さまざまな立場から問題をみて、的確な決断を下さなくてはならない」ということを表しています。
 平岩氏は、東京電力の秘書課に勤務していた際に木川田氏の目にとまり、補佐役として厳しい教育を受けました。
 木川田社長はいつも平岩氏に、具体的なことは言わず「あれはどうなっているか」とだけ尋ねます。木川田社長の言う「あれ」とは、電力業界全体や東京電力において、その時点で最も問題となっている重要な案件です。このため平岩氏は、いつなんどきであっても「あれ」について詳しく説明できるよう経営者と同じ問題意識を持ち、「あれ」、すなわちただちに解決しなくてはいけない重要な案件が何であるかを常に考えるようになりました。
 後に自身が社長に就任した際、平岩氏はさらにその責任の重さを強く実感しました。平岩氏は、社長の決断について次のように述べています。

「社長になった途端にすべてのことを自分が判断しなくてはいけないのです。その決断はすべて現実となって動き出す。もし、間違った決断をしたらとんでもない方向に行ってしまう」

 経営者は、数多くの重要な案件に対して的確な決断を下していかなくてはなりません。そして、その決断の一つひとつが、企業の命運を大きく左右することとなるのです。
 平岩氏は、物事を決めるときは、まずさまざまな面から問題をみつめ、多面的に考えることが重要であると説きます。そのようにしてある時点までくると、覚悟を決めて決断を下します。いったん下した決断は、いかなる反対意見があっても揺るがすことはできません。さらに、決断を下した後も、それに対しての細かいフォローを怠らないことが重要です。すなわち、的確な決断を下すためには、経営者に「小心」「大胆」「細心」という3つの人格がそなわっていなくてはならないのです。
 企業規模の大小にかかわらず、経営者の決断は極めて重い責任を伴います。平岩氏の言葉は、このような経営者の決断の重さを強く表しているものといえるでしょう。
【参考文献】
「21世紀への眼差し 現代社会考」(浅利慶太、慶應義塾大学出版会、1999年8月)
「人間平岩外四の魅力『ビジネスの心』を説く平岩語録」(大野誠治、中経出版、1994年7月)




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「経営のヒントとなる言葉50」
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