経営ヒント格言 6.成功に導くリーダーシップ 38 「身を粉にするな、頭を粉にせよ」 【名言・格言者】藤田田(日本マクドナルド株式会社創業者)【解説】 藤田田(ふじたでん)氏は、1926年、大阪府に生まれました。東京大学在学中に貿易会社・藤田商店を設立し、1951年に大学を卒業した後は、世界の商人を相手として貿易事業に携わりました。1971年、日本マクドナルド株式会社(以下「マクドナルド」)を設立し、東京・銀座の百貨店三越1階にマクドナルド日本第1号店をオープンさせました。以降、マクドナルドは急速に売上高を伸ばし、1991年には、外食産業初の年間売上高2000億円を達成するまでに成長しました。2002年、藤田氏は代表取締役会長に就任しました(2004年逝去)。現在、マクドナルドは、名実ともに日本の外食産業の頂点に立つ企業となっています。 冒頭の言葉は、「経営者は、頭を働かせて経営判断に専念することが重要である」ということを表しています。 藤田氏は、学生時代からの貿易事業を通じてビジネスの基本を学びました。そして、その経験から、西洋式思考に基づいた独自の経営哲学を身につけました。その根幹を成しているのが「合理性の追求」です。 例えば、藤田氏は、「『動く』ことは『働く』ことではない」「経営者は動いてはいけない」といいます。日本では、「経営者たるもの、率先垂範して動かなくてはならない」と考えがちです。このため、経営者が実際に体を動かすことが美徳とされます。一方、米国では「月給が高い経営者が、月給が安い社員の代わりとなって動くのは、会社にとって損になる」と考えます。このため、経営者が実際に体を動かすのではなく、社員に指示を与えて、社員を動かすのです。 一人の人間が体を動かすことには、時間的にも物理的にも限界があります。しかし、頭を使って適切な指示を与え、多くの人々を動かすのであれば、一人のときに比べてはるかに大きな力を発揮することができます。経営者が頭を働かせることの重要性について、藤田氏は、次のように述べています。「端的に言ってしまえば、予測のみが商売の要諦である」 企業では、それぞれの人間がそれぞれの役割を果たさなくてはなりません。社員には、実際に体を動かすことが求められています。そして、経営者には、自社および経営環境の現状を正しく把握し、企業が進むべき道を予測する経営判断が求められます。 日本でマクドナルド第1号店がオープンした当時、「パン食の習慣がない日本で、ハンバーガーが売れるわけがない」という意見が大半でした。しかし、藤田氏は顧客の心理を予測し、顧客に対して先手を打ち続けることでマクドナルドを成功させました。常に頭を働かせ、的確な経営判断を下すことこそ、経営者が果たすべき最も重要な役割だといえるでしょう。【参考文献】「Den Fujitaの商法1 頭の悪い奴は損をする」(藤田田、KKベストセラーズ、1999年12月)「藤田田の頭の中 ハンバーガーを和食に変えた男 マクドナルド独り勝ちの秘密」(ジーン・中園、日本実業出版社、2001年9月) (c)日経BP社 2010 日経BP社「経営のヒントとなる言葉50」JLogosID : 8516446