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32

悲しい
【かなしい】


kanasii

【古代】つらく、なさけない。[中国語]悲哀。sad.

【語源解説】
古語で、〈愛(かなし)〉とあてているように、古代から愛(あい)すべきの意と悲(かな)しいの両意をもつ。カナは、何何し兼(カネ)ルのカネと同根語。力及ばぬほど、相手を見るさえ胸がしめつけられるぎりぎりの限界を示す感情。したがって、愛と悲のいずれをも意味する(やがて分かれる)。動詞形はカナシム(ブ)。

【用例文】
○妻(め)子(こ)見れば可(カ)奈(ナ)之(シ)久(ク)めぐし/世の中は空(むな)しきものと知る時しいよよますます可(カ)奈(ナ)之(シ)可(カ)利(リ)けり(万)○限りとて別るゝ道のかなしきに(源氏)○御孫の君をことの外愛(かな)しがり給ひ(大鏡)○住(すみ)なれし所なれば名残も惜(お)しうかな〔悲〕しくて/大臣殿もかな〔愛〕しういとをしき事(こと)におぼして(平家)○さすがに子なれば憎(にく)かなし(梁塵秘抄)○Canaxij. カナシイ/カナシサ、カナシウ、カナシゲニ、カナシミ(日葡辞書)○なげきかなしむてい、まことによそのたもともぬらしける(きのふは)○ひとつ着(きる)物(もの)袖の嵐をいとふに、因果はふる雨かなしく/是はかなしき〔貧しい〕年の暮(西鶴)○おもしろうてやがて悲しき鵜飼哉/秋風に折てかなしき桑の枝(芭蕉)○哀(カナシヒ)哉(カナ)、嗟哉(同)、悲哉(同)(書言字考)○両(ふた)親(おや)いかばかり悲しと制しつらむ(風俗文選)○悲(かなしむ)、哀(同)(早節用集)○かなしさや釣の糸吹く秋の風/あさましくかなしくおもはれて、夜明くるまでえもいねず(蕪村)○かなしい哉此女と此やまい(川柳)○どないな娼妓(おやま)買(か)ふても、又悲(かな)し悲(がな)し壱分はかゝるはい(浮世床)○けさの暁は別れ〔父との〕かなしき白骨を拾ふ(一茶)○カナシイ 悲哀 sad, sorrowful, lovely.(ヘボン)○将来何(ど)等(ん)な傷心恨(かなしい)事が出(しゆつ)来(らい)するかも(二葉亭四迷)○かなしやメエリイゴラウンド(北原白秋)
【補説】
ほぼ15世紀以後は、歌語などとしては例外に、悲しい、貧しいなどの意が主となって用いられてくる。




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537385