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可愛い・可哀い
【かわいい】


kawaii

【近代】〈かわゆい{かわゆい}〉とも。1)小さくて愛らしい。2)深い愛情を覚える。[中国語]可愛。pretty, darling.

【語源解説】
古形、〈かはゆし(い)〉。比較的新しい語。〈顔映(は)ゆし〉で、カホハユシ→カハユシ→カハイイとなる。顔がほてるような、対象に心が強く引かれる気持ちを表現し、はじめはカワイソウ(可哀想)の意、転じて、恥しいとか愛らしさを覚える意となり、のち〈可愛〉などの用字で示す。したがって、現代語での可愛(カワイ)イの意は『源氏物語』など古典では、〈美し〉で表現した。また、ほぼ19世紀前半まで、カワイソウとカワイイの両意で用いられた。なお、形容詞、〈かわい(ひ)らしい〉や動詞、〈カワイガル〉でも同じような意味を示している。

【用例文】
○箭(や)ヲ立テヽ〔鬼ヲ〕殺サムハナホカハユシ〔かわいそうに思う〕(今昔)○思ふまゝのことかはゆく〔恥かしく〕もおぼえて、少々ぞ書きて見せし(右京大夫集)○ツミセラルヽハカワイヽ〔かわいそうな〕事ゾ(史記抄)○美目(みめ)のあしい子でさへ親の身は可愛いゝで御ざる(mini{虎寛本}狂言)○Cauaij. カワイイ 同情、憐憫の情をもよおさせる(もの)/あるいは、同情の念を抱く/Cauaigaru. カワイガル 不憫に思う。あるいは慈(いつ)くしみ愛する心を抱く(日葡辞書)○かはゆい子には旅させよ(北条氏直諺留)○われ〔おまえ〕よりほかにふかい男はなひものをと、いふほどの事がかはひらしく(好色貝合)○或時(あるとき)、雪のかはいらしく降る日(西鶴)○あすの日中に斬らるゝげな、かはいい〔かわいそうな〕ことをしまする/そのやうにおっしゃられて、かはいがってくださるほど(近松)○どこぞに居るか、何にもせい可愛(かわゆ)い〔かわいそうな〕こつた(咄本)○ホンニ中田屋の文鯉〔人名〕も可(かは)いゝ〔かわいそうな〕事をしたノウ(草双紙)○身にしみじみと可愛(かわい)く/筋(すじ)のいゝ野夫(やぼ)は悪(わる)洒落(しゃれ)さんよりかわいゝ/かわいゝ男/今(こ)宵(よひ)時教(おしへ)て呉類(くれる)そばやはかあゆし(洒落本)○可愛(かわい)よし松は、たれとねた/物事が荒うきこえるナ、可愛(かわい)らしい口つきして(浮世風呂)○可愛(かはい)い子江の島迄は旅もさせ/かはいゝ虫が来てはさす{つきさい}の下(川柳)○いとし可愛(かあい)と思ひ子(ご)の/ヲヽヲヽ可哀(かあい)や可哀(かあい)や(浮世床)○糸(いと)し可愛(かあい)さの女の一念(梅暦)○カワイ 可愛 lovable, pitiful. mini{〈俗語〉}little. カワイクテナラナイ。コレハイチバンカワイコダ、カワイタバ〔束〕/カワイラシイ(ヘボン)○可愛(かわい)〔かわいそう〕や雪はづかしき膚(はだ)は紫の生々(なまなま)しくなりぬ(樋口一葉)○可愛(かはゆ)らしい声で「もしもし」と言った(尾崎紅葉)○可哀(かはい)いお玉〔人名〕をなに殺す気になられない/可哀(かはい)らしい子だと思ってゐた(森鴎外)○おまへはいかにも可愛(かあい)らしい(上田敏)
【補説】
名詞形は〈かはいさ〉。カアイイの訛りは漢字表記、可愛に引きづられたところもあろう。明治期にはいっても、ときに樋口一葉のように発生時のカワイソウの意で用いている。また、〈可哀〉の表記は江戸期の残存。




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537408