ケータイ辞書JLogosロゴ 瀬原村(中世)


岩手県>衣川村

平安後期〜室町期に見える村名伊沢郡のうち中尊寺経蔵別当自在房蓮光の所領として,「御堂出入䉼漆段・屋敷壱所〈瀬原村在之〉」(天治3年3月25日),「免田七段灯油䉼畠一所〈瀬原村在之〉」(保延6年3月28日)などと見える(中尊寺文書)伝説によれば,瀬原・黒沢・白浜の3か村は陸奥守大膳大夫時行が中尊寺巡礼の際に寄進した根本寺領という(中尊寺文書建武元年8月日衆徒等言上状)鎌倉期に入っても,当村は中尊寺領としてさまざまな寺役の奉仕を続けたことが知られる弘長元年9月25日中尊・毛越両寺権別当判物に,「御経蔵文殊講油畠事〈瀬原村検杖次郎作〉」と見える文永9年6月23日関東裁許状には,「同(中尊・毛越両寺)院主分領瀬原村河原宿事」と見える瀬原衣川の河原に宿があり,そこからあがる税が中尊・毛越寺院主の収入とされたことが知られる建治2年2月24日両寺別当判物は僧円善に「瀬原畠伍町」を安堵したもの弘安3年5月25日永栄の譲状は,経蔵別当職ならびに「岩井郡骨寺村以下免田屋敷等〈麓并瀬原村在之〉」などを弟子朝賢に譲与したもの同じく弘安7年3月11日両寺別当判物は朝賢の相続を安堵したものである正応4年4月5日朝賢が記した譲状にも,「出入免田七段〈瀬原村在之〉」「灯油畠参所〈壱所瀬原村在之〉」と見える鎌倉末期の正安2年閏7月18日阿闍梨寛西の相博状には「大日堂免畠一所〈佐藤次作 瀬原村〉」と見える同時に見える「大長寿院免畠弐所〈壱所藤五郎入道作 壱所藤平次入道作〉」も当村のうちか同じく鎌倉末期の延慶2年7月2日別当判物には「中尊寺大長寿院免田壱町壱段〈在瀬原村〉并灯油畠等〈当寺麓并瀬原村在之〉」と見える同じく正和2年12月18日・同3年12月25日の行盛譲状などにも,同様の記載が見られる同じく元亨3年12月20日頼秀の証文には,「瀬原うちに田三段」ほかを9貫文で売り渡すとあった鎌倉最末期の嘉暦3年6月15日行盛の去状にも,「せわら(瀬原)のそりはたけ(畠)代九百文」とあった当村内の田畠が寺僧らによる売買の対象となっていたことが知られる南北朝〜室町期になっても,当村は中尊寺領であり続けた応安6年10月25日経蔵別当行栄の譲状に,「同堂出入免田七段内三段灯油畠等〈瀬原村在之〉大長寿院免田灯油畠等・愛染明王免田〈不作〉畠・塔免田〈不作〉畠・白山講田〈不作〉瀬原村在之」と見える同じく行栄の永和2年2月25日譲状にも,「平泉中尊寺大長寿院免田一町・南俣五反并塔免田三段・灯油畠・白山講田六段等,瀬原村在之」「同堂出入免田七段内三段灯油畠等〈瀬原村在之〉,大長寿院免田内大町上三段・愛染明王免田〈不作〉・白山講田〈不作〉瀬原村在之」「瀬原村内大長寿院免田一町内南俣五段・愛染明王免田畠・塔免田畠等」などとあったここに見える南俣は衣川南俣の地かとするならば,往時の瀬原には,近世の下衣川村はもちろんのこと,上衣川村南又までもが含まれていたことになる応永28年11月19日法眼頼栄の判物に「常住院修正田三段瀬原村在之」,永享6年2月5日行栄譲状には,「瀬原村内塔免田三段并ソリ畠三段・百メキ一段」などと記されていた安倍頼時・貞任らの根拠地となった衣川柵跡は川東・松下の衣川の湾曲部に位置する本丸・北の丸・遠城・並木衣川柵・小松館などの諸郭が一体となって城柵を構成したものと見られる川東田中西の長者原廃寺跡も近い金売吉次の屋敷跡と伝えられたが,発掘調査の結果,堂々たる礎石群が検出された安倍氏の寺跡である川東集落入口の摂待館(摂待森館)は平泉藤原秀衡の母公の居所と伝える衣川の北岸に位置する北辺に巨大な土塁跡が残る東西150m・南北70m西田辺神明神社が建つ館跡の大部分は水田となる(仙台領古城館)瀬原の陣場館は秀衡が平泉から出羽国へ通ずる峰々に建てさせた鐘楼の跡と伝える中世にも物見などとして利用されたと見られる遺構は残らない現在は「懐徳館」(近世城館を模した史料館)が建つ豊巻の館代館(館城)の南は衣川の絶壁西は深い沢に面する南西の館城明神は館主の守護神か(同前)古宿・宿・六日市場・八日市場・七日市場の地名は往古の駅場と伝える(安永風土記)関屋敷は衣の関の旧跡という白山社は嘉祥3年慈覚大師の開基,堀河・鳥羽両帝の勅願にて藤原清衡が長治年中に建立したと伝える近世には下衣川村のほか,西岩井戸河内村の内馬場二反田の鎮守女人結戒(界)の山であった麓の荒沢権現社(口宮)も白山社と同時の創建という(同前)関の神明社には南北朝期の貞治4年の鰐口があった「神明神社御宝前 大檀那沙弥主(王)道重国大檀那沙弥主(王)明(用)」などの文字が見えたという(県金石志)
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(C)角川日本地名大辞典「旧地名」
JLogosID:7254034
最終更新日:2009-03-01




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