武田郷(古代)とは-辞書辞典解説@JLogos

武田郷(古代)

　平安期に見える郷名｡｢和名抄｣常陸国那賀郡二十二郷の1つ｡ひたちなか市武田に古墳時代の石高遺跡,同市高野に縄文時代～奈良･平安期の高野富士山遺跡,同市稲田に二ﾂ森古墳群,同市高場に弥生時代～古墳時代の下高場遺跡,鉾ﾉ宮古墳群がある｡高野寺畑遺跡からは奈良期の住居跡も発見されている｡仁平元年4月8日の常陸国留守所下文写に｢留守所下　吉田郡倉員　可早任　御庁宣旨,令領知武田荒野事｣と見え(吉田神社文書/県史料中世Ⅱ),当地の荒野をめぐり鹿島社の中臣則頼と常陸大掾氏の流れをくむ吉田郡司の間で開発･支配をめぐる相論が展開する｡常陸国留守所は郡司側の請文および庁宣を根拠に則頼の沙汰の停止および新作2町の開発･加作を条件として郡司名田の1つ倉員名への当地の編入を許可している｡｢倉員｣は員倉の転で現在のひたちなか市勝倉をさすという説もある(新編常陸)｡当郷域は平安中期から吉田郡のうちとなる｡源義光の子義清は,当郷に住して武田冠者とよばれた｡12世紀はじめ頃の当郷周辺は,吉田神社や吉田清幹･盛幹父子,鹿島神宮の中臣氏,それに武田義清･清光父子らが勢力を張り合った地で,｢長秋記｣大治5年12月30日条に｢常陸国司申住人清光濫行事等也｣と見えるように,勢力拡張を図る新参の義清･清光らは,吉田神社の社領か鹿島神宮の社領を侵略する行為に出たために,吉田郡の地に隠然たる実力を有する吉田清幹･盛幹に告発されて甲斐国市河荘に配流された｡これが甲斐武田氏の祖であるが,清光は源義家の弟義光の孫に当たり,当地は義光―義清―清光と続く武田氏の本貫地と考えられる(勝田市史)｡現在のひたちなか市東部の地に比定される｡

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(C)角川日本地名大辞典｢旧地名｣
JLogosID:7274869
最終更新日:2009-03-01

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