田井荘(中世)とは-辞書辞典解説@JLogos

田井荘(中世)

　鎌倉期から見える荘園名｡高市郡のうち｡①田井荘｡兵庫荘と合わせて田井兵庫荘と称されることが多い｡春日社神供料所･春日社本談義屋講問料所(年欠学侶集会事書/春日大社文書1)｡｢吾妻鏡｣建久3年12月14日条に｢是平家没官領之内……大和国田井兵庫庄……已上廿ｹ所,先日被奉譲黄門室家〈将軍家御妹也〉也｣とある｡もとは平家領であったが,平家都落ちののち,寿永3年に没官領として後白河法皇から源頼朝に給預され,さらに権中納言一条能保妻(頼朝妹)の知行するところとなった｡建久3年能保妻の死去によってその子女らに譲与されたが,まもなく春日社に寄進されたらしい｡平安末期～鎌倉初期頃には10名から構成され,各名5石程度の所当米を出したと推定されるが,文永2年7月日付名田佃田数注進状(大宮文書/国学院大学日本文化研究所紀要29)によれば31名,面積合計27町1段90歩,所当72石8斗1升6合となっている｡室町期の宝徳2年田井兵庫荘御供米注進状･康正元年田井兵庫荘御供米注進状など(同前)では34名の構成で,所当米51石1斗7升6合2勺,ここから井料･八幡御供･池修理料･荒日河成･越智段銭分など在地での必要経費を差し引いた残余が春日社に上納されている｡大麦･蕎麦の収納もあった｡荘官は田井と兵庫から各々出たとみえ,康正元年田井兵庫荘御供米注進状(同前)には｢公文代　観念〈ﾀｲﾉ庄〉｣｢下司代　助三郎〈ﾋﾔｳｺ〉｣が見える｡②西田井荘｡至徳3年6月9日付一乗院良昭維摩会講師段米催状(岡本文書)に｢西田井〈一丁六反大〉｣とあり,一乗院門跡の段米を賦課された｡また室町後期の越智郷段銭帳(春日大社文書4)には｢西田井庄　三町三反三百歩｣と見える｡③東田井荘｡室町後期の越智郷段銭帳(同前)に｢東田井庄　此庄無之｣とある｡室町期には田井の地は国民越智氏の勢力下にあった｡なお文禄4年9月21日付知行方目録(沢氏古文書7)によれば｢一,参百拾五石　同(大和国高市郡)たいの庄｣とあり,当地が豊臣秀吉から沢源六に宛行われている｡

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(C)角川日本地名大辞典｢旧地名｣
JLogosID:7400421
最終更新日:2009-03-01

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