ケータイ辞書JLogosロゴ 佐土原城下(近世)


宮崎県>佐土原町

 江戸期の城下町名。日向国那珂郡のうち。佐土原藩の城下町。佐土原城を中心とする城下は上田島村の地内に建設された。佐土原城はもとは伊東義祐の隠居城で舞鶴城とも呼ばれ,佐土原藩主島津氏の入城後,2代忠興の寛永2年に城は山上から山下二の丸に移転された。慶長8年佐土原城に入った島津以久は,城を囲んで大手口・鴫之口・十文字口・野久尾口の4口に武士団を配置し,このうち大手口には上級家臣,鴫之口には中級家臣の屋敷を置いた。なお,佐土原藩領内には藩領を守備するために都於郡・三納・三財・新田【にゆうた】・富田の5か所に外城を設け,各外城には藩の重臣が地頭として任命された。これらの武士団は城下も含めて大手衆中,都於郡衆中などと地名で呼ばれている。町人町は,大小路・万陀羅小路・十文字・上中小路・下中小路・納屋町・五日町・八日町・新町があり,佐土原九坊といわれた。このうち大小路は1〜4丁目に分かれている。また,万陀羅小路は,須木の如法尼が天文8年娘の嫁ぎ先である佐土原に来て,万陀羅寺を建立,その通りの名という。如法尼が下賜の衣をほぐして織った万陀羅は,その縁起書とともに高月院に伝わる。町は町奉行の支配下にあり,部当・年行司・年寄・小触以下の町役人が置かれた。新町・万陀羅小路・十文字・大小路1丁目境には冠木門があり,そのそばに番所が置かれて夜間は門を閉じた。また,八日町・五日町境には町会所が設置され,町奉行・小頭・糺明方・足軽などが詰めていた。八日町には木村長門守重成のものといわれる屋敷があった。重成の母は豊臣秀頼の乳母であったという。寛文5年,幕府の日蓮宗不受不施派禁令策により,同派講門派始祖日講が佐土原藩預りとなり,翌6年7月20日,城下大小路の新邸に到着した。同7年3代藩主島津忠高は帰国すると,日講の書院の増築と宅地拡張を命じている。日講は11年後の延宝5年には,野久尾衆中猿渡閑兵衛と屋敷を交代し,この地で元禄11年3月11日73歳の生涯を終えた。日講は家臣たちに講義を行い,その処遇は賓客としてのものであったといわれ,日記「説黙日課」や「録内啓蒙」を残している。なお,日講の墓は現在佐土原小学校南の丘陵に岡山市不受不施講門派本山本覚寺管理のものと,同市不受不施派本山妙覚寺のものが2基あり,遺骨・経石は妙覚寺墓石下に眠る。これらは僧日講遺跡として昭和17年県文化財に指定された。元禄7年11月2日,下中小路からの出火により城下の144戸を焼失し,大小路・上中小路・五日町・八日町・新町は焼け残ったという。町家数は,享保10年の大小路の稲荷神社棟札に「施主人数町中三百八拾軒」と見え,寛政4年の高山彦九郎「筑紫日記」にも「町家三百八拾軒ばかり」と記されている。文化7年4月18日,伊能忠敬一行19人が城下を訪れ,大小路町油屋友吉宅を本陣とし,蚊口小路(納屋町)藤尾平五郎宅に別宿をとっている。文政6年,大坂御牧直斉の子重次郎篤好(号は赤報)が藩の教授として召抱えられたが,その待遇が御一門格とされたことに対して鴫之口衆のうちに対立が生じ,ついに藩は翌年5月に宗藩御目付東郷長左衛門以下21名の来藩を待って44名の処分者を出して終結をみた。遠島13名(奄美大島4・沖永良部島3・鬼界ケ島3・徳之島3),領外追放2名などである。文政8年には赤報を教授とする藩校学習館が追手門近くに開かれ(現佐土原小学校の地),追手口・鴫之口・野久尾口・十文字口には学習館入学前の8〜14歳の家臣子弟を教育する郷学所が設置された(佐土原町史)。安政5年の「寺院本末開山調」によれば,城下の寺院は,真言宗都於郡黒貫寺末宝珠山三諦寺諏訪坊(50石格護)・同末石上山不動寺(40石格護)・同末大日山如意輪寺多楽院(寺領20石)・同末篠竹山補陀落院深俣寺(寺領2石7斗余)・同末愛宕山勝軍院十輪寺(7石5斗格護),曹洞宗都於郡大安寺末で島津家久・豊久を祀る少林山天昌寺(寺領30石)・同末洞岳山正竜寺・同末照桂山金柏寺・医王山憩梅庵,浄土宗知恩院末で初代藩主島津以久を祀り藩主の菩提寺である大池山青蓮寺高月院(寺領108石),同宗高月院末本立山正覚院誓念寺・同末瑞応山曼陀羅寺,同宗誓念寺末願生山浄念寺,黄檗宗宝珠山城山寺(寺領50石),浄土真宗本願寺末竜頭山宗称寺が見える。明治3年,佐土原藩の藩庁は下田島村の広瀬に移され,これに伴って藩主・商家の多くも同地に移転して広瀬に新たな城下が建設され,上田島村の城は廃毀された。また藩主の居宅は石崎村に移っている。旧城下のうち町人地は明治3年以降上田島町あるいは佐土原町とも称していたが,明治14年上田島村・佐土原町となる。
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(C)角川日本地名大辞典「旧地名」
JLogosID:7460214
最終更新日:2009-03-01




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