ケータイ辞書JLogosロゴ 広原村(近世)


宮崎県>高原町

 江戸期〜明治22年の村名。日向国諸県【もろかた】郡のうち。鹿児島藩直轄領。はじめ小林郷,延宝9年からは高原【たかはる】郷に属す。これは同年高原郷から高崎郷が分立したことにともない,当村と野尻郷水流村の一部が高原郷に編入されたもので,延宝8年12月「御用人取次ニ而日州高原江被仰渡候ハ高原之内高崎割候而外城ニ被仰付旨被仰渡候事」(年代記/三州御治世要覧)として,同9年「日州高原割外城ニ相付,小林之内広原村ニ用夫廿人相添高原ニ附」ことになった。村高は,「三州御治世要覧」では599石余,「旧高旧領」では1,200石余。なお,寛文4年「日向国諸県郡村高辻之帳」や「天保郷帳」には当村の名は見えず,元禄11年「日向国覚書」には温水村内広原と見える。同書では,温水村が温水村483石余・温水村640石余と2か所に記され,また温水村内堤分村,温水村内広原と記載されている。640石余の温水村は前後の郷帳の高を検討すると堤分村(堤村,現小林市堤)にあたることが分かり,また温水村の名は「薩藩政要録」や「旧高旧領」には見えなくなる。このことから考えると,温水村・堤分村の地域が江戸初期に永吉島津氏の私領となるに及んで,温水村は広原村と堤分村に分けられて温水村は消滅し広原村と堤分村が存在することになったのではないかと思われる。そして表高としては「天保郷帳」まで温水村(堤分村とは別に483石余とある)と届けられていたが,「薩藩政要録」などに当村名が見られるように鹿児島藩領内では温水村の一部が広原村として把握されていたのである。天保7年の調べによると,当村の石高は,百姓請取高714石余・庄屋請取高34石余・郷士屋敷6石余・寺社屋敷7斗余・御蔵入59石余・郷士抱地336石余・小松新蔵および小松式部抱地59石余(高原町史)。一般的に鹿児島藩領の特徴であるが,当村も御蔵入地に比べて郷士抱地(郷士の自作自収地)が非常に多い。「西諸県郡誌」には当村の門として仮屋鶴門・鷹巣門・水流別府門・稲盛門・西鶴門・木場田門・森永門・大丸門・井手之上門・吉留門・末永門・入佐門・室屋門・永住門・久保門・西門・盛満門・福永門・吉永門・南門・今西門・広原門・福沢門の23門があげられている。鎮守は井ノ上に王子神社がある。明治4年鹿児島県,都城県を経て,同6年宮崎県,同9年鹿児島県,同16年からは宮崎県に所属。同年北諸県郡,同17年からは西諸県郡に属す。明治7年広原小学校が創立。「日向地誌」の著者平部嶠南が諸県郡を調査したのは明治13年で,同書によれば,村の規模は東西約1里・南北約1里18町,東は麓村,西は細野村,南は蒲牟田村,北は隄村と接し,宮崎県庁からの里程は西へ約12里26町,地勢は「西ニ高岳ヲ負ヒ,谷縦横ニ通シ,岡阜起伏,運輸便ナラスト雖モ薪芻饒足,生業難カラス」と見え,地味は「其田多ク黒ニガ土,赤砂礫土雑ル,其質中ノ下,畑ハ赤砂礫(霧山焼土),黒ニガ土雑ル,其質下ノ中,水利ハ便ナリ,水害モ亦多シ」とある。また,税地は田143町余・畑117町余・宅地18町余・切換畑124町余・山林32町余・原野2町余・藪54町余・草生地31町余などの計532町余,無税地は計1反余,官有地は山林231町余・原野469町余・藪9町余の計710町余,貢租は地租金1,551円余・雑税金439円余の計1,990円余,戸数190(うち社1)・人数905(男486・女419),牛215・馬353,村内の字地別戸数は福原35・入佐【いつさ】30・井手ノ上50・三方庚申40・温谷【ぬくたに】28。学校は地内三方庚申に人民共立小学校があり,生徒数は男31。神社は井ノ上に王子神社がある。民業はおおよそ農業に従事し,農間には工業に10戸,商業に1戸,牛馬売買に4戸が従事した。物産は,駒14〜15頭・犢3〜4頭・猪鹿10余頭・鶏700羽・糶1,000石・蕎麦4〜5石・禾4〜5石・油菜子7〜8石・樟脳400〜500斤・麹10石・鶏卵4,000〜5,000顆。さらに,川は後谷川が流れ,渡船場に後谷渡があり,用水は千谷北溝・千谷南溝を利用し,道路は真幸往還が通ると記される。明治18年の広原小学校の就学者数54・不就学者数49で,就学率は52.4%であった(高原町史)。同21年の戸数186・人口986,反別は田150町余・畑242町余・宅地19町余・池沼1反余・山林327町余・原野504町余・雑種地4反余の合計1,245町余,諸税および町村費の納入額は国税1,624円余・地方税585円余・村費116円余・協議費26円余,村有財産は耕宅地1反余などがあるのみ(郡行政/県古公文書)。明治22年高原村の大字となる。
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(C)角川日本地名大辞典「旧地名」
JLogosID:7460738
最終更新日:2009-03-01




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