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楽亭
【らくてい】


茶室のように静謐な空間

楽亭

赤坂氷川神社の東側の静かな一角に、看板も暖簾も掲げない知る人ぞ知る名店がある。白木のカウンターを囲む12席のみの店内は無駄な装飾を省き、茶室のように静謐だ。

主人の石倉楫士さんはこの世界の大御所ともいうべき人。山の上ホテルで10年修業したのち、昭和43年に開業した。「赤坂は花柳界の人が多いので、着物に匂いのつかない、柔らかい香りの天ぷらが好まれますね」。大切なのは材料と油。長年やっているので材料はいいものが揃うという。品書きはコースのみ。きす、めごち、穴子など江戸前のタネに、季節によってぎんぽうや稚鮎、はぜ、山菜、松茸などが加わる。油は炒らずに絞った太白胡麻油を使い、1コース揚げるごとに全部取り替える。「衣がバリバリしてはいけない」と言うとおり、やや厚めの衣はしっかり揚がっているのに硬くなく、タネの旨みを上手に閉じ込めてまさに名人芸だ。コースの最後は貝柱のかき揚げで、天茶かミニ天丼、白い御飯とのセットから選べる。




東京書籍
「東京5つ星の鰻と天ぷら」
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