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芥川賞
【あくたがわしょう】


第二回芥川賞が取り消された!「幻の芥川賞作家」小山祐士

純文学芥川賞大衆文学直木賞か。作家なら、そのどちらかを生涯一度でいいから手にしたいと思う文学賞の双璧。その一つ芥川賞で、かつてたいへんな事件が起こっていた。一度芥川賞を手にしたというのに、取り消されてしまった不幸な作家がいる。その人は、当時劇作家小山祐士氏。一九三五(昭和一〇)年に白水社から出版された『瀬戸内海子供ら』という作品だった。そもそも文学作品としてよりも、先に舞台作品として築地座で岸田国士演出上演され、これが好評なことから、芥川賞候補に挙がっていた。内容素晴らしいので、審査会でも芥川賞決定し、マスコミにも芥川賞受賞作として大々的に報じられた。だが、その後、ある一人委員からクレームが付いた。芥川賞には、「この半年間に発表された短編小説のなかから選ぶ」という規約があるため、一昨年発表したもので、しかも戯曲として上演されていた同作品賞を取るのはおかしいという理由からだ。このクレーム受け入れられ、なんと賞は取り消され、この第二芥川賞該当者なしという正式発表後におこなわれてしまったのである。芥川賞を取れば、どんな本でも数十万部は売れるし、一躍有名人になれる。その機会一瞬小山氏は失ったのだ。だが、結果、「幻の芥川賞作家」として、雑誌などから依頼が舞い込み舞台では方言劇などを書き続け、後に文壇でも瀬戸内作家としての地位を確立する。こうやっていつまでも人々の記憶に残るのだから、取らなかったことで、いいこともあるのかもしれない。




東京書籍
「雑学大全2」
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