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上高地
【かみこうち】


地名のわりには全然高い場所にないのはなぜか?

安曇村西部にある「上高地」は、穂高連峰への最大の登山基地として、また景観のよい観光地として知られている。北アルプス一帯中部山岳国立公園指定であるが、そのなかでも上高地一帯は、国の特別名勝特別天然記念物にも指定されており、その景観保護義務づけられている。「上高地」と聞くと、その字から、よほど標高高いところにある地域だろうと思ってしまうが、現実はそうではない。周囲は、焼岳穂高岳、長塀山、霞沢岳などがあるが、上高地あたりは、それらの山々囲まれた平野である。いわゆる盆地なのだ。にもかかわらず「上高地」という、いかにも標高が高そうな名がつけられたのはなぜだろうか。答えは、もともとは「上高地」ではなかったからだ。昔は「神河内」と書かれていたのである。ここでいう「河内」は、山間小さな平地のこと。読み方は「コウチ」「カッチ」「カワチ」などである。「河内」に「神」の字がついているのは、梓川のほとりに穂高神社が祀られていたからだろうといわれている。中島正文氏は『山岳』のなかで、「『上高地』の名称最初に記されたのは一六四六正保三)年四月製作の『信濃松本御領絵図』のなかに、上高内川という記入がある」と述べている。ここで中島氏は、あくまで「私の知る限りでは……」と断り書きをしているが、「上高地」と記されるようになったのは、江戸時代間違いないらしい。一七二四(享保九)年の『信府統記』には、上高地のことが詳しく記されている。ちなみに、大正時代までは、「上高地」と書いてはいても、「カミコウチ」ではなく、「カミウチ」「カミグ」と読まれることが多かったようだ。




東京書籍
「雑学大全2」
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