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ピサの斜塔
【ぴさのしゃとう】


あのガリレイによる実験の話は、かなり尾ひれがついている

ルネサンス期を代表するイタリア自然科学ガリレオガリレイ功績としていちばんよく知られているのが、物体落下実験による新しい力学定義である。同じ材質でできた重さ異なる二つ物体を、同じ高さから落下させると、ほとんど同時に着地するという証明であり、物体重量落下速度関係の新しい発見であった。それは古代から信じられてきた、重いもののほうが先に落下するとした、落下速度重さに比例するというアリストテレス説の完全な否定だった。このガリレイ実験は、一五八九年に、たくさんの教授学生たちが見守るなか、ピサの斜塔傾斜利用しておこなわれたと伝えられている。この実験の話は、ガリレイ弟子だったヴィヴィアーニの著である『ガリレオ伝記』が伝えてきたもので、後世学者たちも様々な形で引用している。具体的落とし物体材質重さについて触れたものさえある。確かにガリレイは、一五八九年にピサ大学教授就任しており、斜塔を使っての実験試み可能性がなくはない。ヴィヴィアーニの著書にも、斜塔を使って衆目見守るなかで実験したという記述がある。ところが、ガリレイ本人の『運動について』という著作のなかには、ピサの斜塔における実験についてはまったく触れていないのである。彼の記述は、アリストテレスの説にどうしても疑問残ると記し、「もし仮に」という形で物体落下させたときに起こる状態を、思考のなかだけで実験してみせているにすぎない。実際に実験をしたという記述はまったくないのだ。ヴィヴィアーニの著作は、ガリレイ死後一〇年以上を経て書かれたものだ。どうも弟子である彼は、師を偲ぶあまり、その業績を示そうと誇大表現して筆がすべったもののようである。後世学者たちも、ガリレイ偉大さのために、さらに話に尾ひれをつけたというのが、ピサの斜塔実験伝説真実であるようだ。




東京書籍
「雑学大全2」
JLogosID : 14820738