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糞ころがし
【ふんころがし】


「糞ころがし」という名で呼ばれた、世界的に有名な古代エジプト王

小さい頃、『ファーブル昆虫記』を読んで昆虫採集夢中になったという人は少なくないだろう。なかでもスカラベ(糞ふんころがし)についての部分は、動物の糞を食べる昆虫であることと、丸めた糞を逆立ちして巣まで転がしていくという姿がユニークだったために、記憶に残っているという人も多いだろう。さてこのスカラベ英名は「sacred beetle神聖な甲虫」というが、これは古代エジプト人が、この虫を聖なる虫としてあがめたことに由来している。古代エジプトでは糞球を転がす動作から、スカラベ日輪太陽)の回転司るケペラ神の化身とみなしていた。日輪見立てた糞球のなかから生まれる様子が、「自ら生まれ出るもの」とされたケペラ神に通じるところもあったようだ。また、スカラベ古代エジプト語で「ケペレ」と呼ばれ、「生成」「創造」「再生」を意味する「ケペル」と音が近かったため、創造復活シンボルとされて、王族持つ印章護符装身具などのモチーフとして珍重されるようになったといわれている。とくに新王国時代第一王朝アメンヘテプ三世は、凍石や石灰石に自分の功績記念してスカラベ多数彫っている。その子のアメンホテプ四世は当時盛んだったアメン信仰捨てアテ信仰へと宗教改革をおこなった人物だが、そのおかげでケペラ神と、さらにはその化身とされたスカラベ知名度エジプト全土に広まっていった。やがて王位はその弟(子とする説もある)ツタンカーメン引き継がれる。彼は第一王朝最後の王となるが、その即位際して自分の即位名の一部にケペル(スカラベ)とつけたのだ。わずか一八歳で謎の死を遂げたツタンカーメンは王としての功績よりも黄金マスクをつけたミイラとして見つかったことで有名になるが、それとともにまた、スカラベ永遠の神聖虫の地位を不動のものとしたのである。




東京書籍
「雑学大全2」
JLogosID : 14820786