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苗字
【みょうじ】


苗字「一」「乙」「靨」は、いったいなんと読む?

日本人の姓ほど読み方複雑難しいものはないだろう。「一」や「乙」と書いて苗字といわれたら、一発正確に読める人は多くはない。「一」さんは、「いち」「かず」「はじめ」さんと読むのが普通だが、「にのまえ」さんと読む場合もある。「乙」さんの読み方は、「きのと」さんだ。字画多いのは、たとえば二五画の「籬」さんで「まがき」さん、二三画の「靨」さんは「えくぼ」さんだ。これらはいずれも日本実在する姓である。日本人苗字種類は、実に一〇万を超えるといわれる。それを考えれば、珍姓、難解姓があっても不思議ではないのだが、なぜこんな難しい姓があるのだろうか。一八七〇(明治三)年九月一九日の太政官布告により、一般の庶民苗字持つことを許された。明治政府によって一般庶民苗字持つことが許され前の封建時代には、帯刀とともに苗字は、武士庄屋など特権象徴とされ、多くの庶民は「どこそこの八兵衛」「なんとかの佐介」のように、苗字名乗ることは許されなかった。しかし、太政官布告により苗字持てるようになったのに、一般の庶民最初苗字がないことに不便感じていなかったので、届けを出そうとしなかったのである。ところが、すべての人が苗字持つことによって徴兵教育などの制度を整えようとしていた明治政府は、これでは困ると、一八七五(明治八)年には「平民苗字必称義務令」を布告し、苗字届けない者を罰する強制力付けた。そこで慌てたのは庶民である。我も我もと知識階級である僧侶庄屋さんに駆け込み大急ぎ苗字付けてもらったのである。これに頭を抱えたのは僧侶庄屋さんも同じである。一度に大量の苗字考えなければならなかったのだ。多くの人は、住んでいる村落名や地名を姓としたので、地域によって同じ姓が多く誕生した。いっぺんに大勢人の苗字付けるため、地名のほかにも、そのときのひらめきや思いつくままの言葉をそのまま姓にしたり、野菜や魚など、周囲にあるものの名称を姓に付けられた人もいた。「浜地」「太古」「株菜」といった姓がそれにあたる。あまりにも急な平民苗字必称義務令」が、珍姓や難読姓を生んでしまった原因の一つのようである。




東京書籍
「雑学大全2」
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