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(笑)


そもそもは「人々笑フ」「(笑声)」だった!?

雑誌インタビュー記事座談会形式文章に見られるだけではなく、メールなどでも使われることが多いのが、「(笑)」という記号ではなかろうか。津野海太郎読書欲・編集欲』(晶文社)によると、実はこの記号は、明治一〇年代日本速記術が開発されたころからすでに存在していたという。つまり、「(笑)」は一〇〇年以上歴史持っているということだ。津野氏によると、「(笑)」という記号思い出されるものには、一八九四(明治二七)年に出版された内村鑑三演説速記後世への最大遺物』(現在は岩波文庫所収)があり、同書のなかには、(満場大笑)や(拍手喝采)のような記述が見られるという。また、高橋安光『近代雄弁』(法政大学出版会)によると、一八九三(明治二六)年に出版された『講演叢書講談演説集』には、聴衆反応記録するのに「人々拍手喝采」、「人々笑フ」、「人々大ニ笑フ」とあり、さらに耳では確かめることができないはずの「人々笑ヲ含ム」という箇所もあったようだ。以後時代が下って大正時代になると、「新園芸」や「新潮」といった雑誌座談記事人気を博すようになり、一九二七(昭和二)年三月号の「文藝春秋」における「徳富蘇峰座談会」により、雑誌上での記事としての座談会定着していくのだが、それらの記事においては演説会や座談会のときのような聴衆はおらず、代わりに編集者出席者聴衆となる。そこで、「人々大ニ笑フ」という記述徐々に簡略化されて「(笑声)」になり、さらに「(笑ひ)」や「(笑い」となり、最後には、いまの私たちが見たり使っているような「(笑)」だけになったようである。




東京書籍
「雑学大全2」
JLogosID : 14820983