100辞書・辞典一括検索

JLogos

36

知床岬
【しれとこみさき】


網走地方斜里町にある岬。知床半島の先端にあり,わが国最北東端(北緯44°20′,東経145°21′)となり,国後(くなしり)島のルルイ岬と対して根室海峡の北口をなす。かつてはヌサウシまたはヲサウシと呼ばれ,松浦武四郎の「知床日誌」には「并てヌサウシ。則此所を称してシレトコと云なり。礒にはカチハリ(鷲),イタンヘ(海),トカリ(水豹)多く」とある。寛政9年の「蝦夷巡覧記」にも「シャリ当所運上屋有……此処烽火有当所ヨリシレトコ崎丑ニ当ル番所有」とみえる。この岬は東西蝦夷地の境界ともなり,「ネモロ舎利の境柱有,従ネモロ会所四十一リ弐十七丁四十間,従舎利運上屋十八リ三十一丁」(知床日誌)とされるが,厳密にはこの場所はイソヤと呼ばれ,知床岬から1km東の羅臼側にあるという。現在の羅臼・斜里両町の境界はイソヤ~知床岬間にある。海岸線は出入りに富み,火山性の山地が海食崖を発達させ岩礁も多く,安山岩質の集塊岩や岩脈,柱状節理がみられる。また岬付近にはよく発達した海岸段丘があり,下位の面は40~70mで草地,上位の面は75~100mで,エゾマツ・トドマツなどの森林に覆われ,海岸には形成中の波食台がみられる。この岬付近はウミウ・オジロワシ・オオワシのほか,トド・アザラシの生息地にもなり,岬の南西1.1kmには続縄文~オホーツク文化期に至る住居跡の知床岬遺跡がある。僻遠のため現在まで,陸路の交通手段はなく,定住者もいないが,夏のコンブ漁,秋のサケ漁のための番屋があり,西海岸の斜里町側には宇登呂漁港(第4種漁港)がある。「知床旅情」にも「知床の岬にハマナスの咲く頃」と歌われ,夏季には宇登呂港からこの岬を通って羅臼港に至る半島巡りの遊覧観光船があり,奇岩・滝をなす海食崖などの壮絶な眺めを満喫できる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7004195