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アジア(通貨)危機
【あじあきき;あじあつうかきき】


1997年7月のタイ・バーツの暴落に始まる一連のアジア通貨の急落とそれに伴う経済的混乱のことをいう。アジア通貨危機は最終的に中南米、ロシアなどにも伝播し、先進国の金融・資本市場に大きな打撃を与えた。
1980年代後半から1990年代前半のアジア諸国は、日本をはじめとする先進国からの直接投資拡大を背景に輸出主導で高成長を続け、「世界の成長センター」と呼ばれるようになった。その一方で、産業の裾野が広がっていなかったことから景気拡大が輸入の増加に繋がりやすく、経常赤字が拡大していった。また、外資導入や輸出拡大を進めやすくするために、為替レートは自国通貨を米ドルと固定するドル・ペッグ制の採用を続けた。このような環境下、特にタイにおいて、1990年代半ば頃から短期のドル建ての借り入れを増やして、それを自国通貨に転換して、多額の不動産投資や株式投資が行われるようになった。この結果、1996年にはタイ経済はバブル的な状況に陥るとともに、巨額のドル建て債務を抱え込むことになり、通貨の大幅なミスマッチが発生した。1997年に入ると、先進国からの借り入れが次第に困難になり始め、タイ・バーツが過大評価されているのではないかとの見方が広がっていった。1997年5月にヘッジファンドがタイ・バーツに激しい売りを浴びせたのをきっかけに通貨危機が表面化、タイ中央銀行は通貨防衛のために、短期金利の引き上げやバーツの買い支えで対抗したが、7月2日にドル・ペッグ制の維持を断念し、変動相場制に移行した。
タイの通貨危機は、近隣のフィリピン、マレーシア、インドネシアへと次々と伝播し、フィリピンは7月11日、インドネシアは8月14日、マレーシアは8月17日に変動相場制に移行した。10月には、台湾や香港、韓国にまで通貨危機が広がり、さらには、新興国全般への不信感が強まったため、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ロシアなどの通貨も大きく下落した。




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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