100辞書・辞典一括検索

JLogos

33

インフレーション
【いんふれーしょん】


Inflation

物価が全般的かつ持続的に上昇する現象。価格上昇が急激であっても一部の商品にとどまる場合や、一回限りの価格上昇はインフレとは言わない。物価は需要曲線と供給曲線の交わる地点で決定される(図)。物価の上昇は需要曲線の右シフト(DD→D'D')か、供給曲線の左シフト(SS→S'S')のいずれかによって起きる。いったん物価が上昇すると、人々の物価予想(インフレ期待)に影響を与え、それが人々の設定する価格や賃金に影響を与えるため、需要曲線や供給曲線の連続シフトが起きやすくなる。
物価の持続的な上昇が、主として需要曲線の右シフトによって起きる場合、これをディマンド・プル・インフレという。需要曲線の右シフトは、好景気の持続や、拡張的な財政政策、金融緩和等によってもたらされる。ディマンド・プル・インフレは、同時に生産量の増大をもたらすため(Y→Y')、素朴なケインズ理論のもとでは必ずしも悪いものではない。ただ、需要が拡大を続け、いったん生産力の限界を超えると、それ以上生産量は増加せず、物価だけが上昇していく。ケインズはこうした状態を真正インフレーションと呼んだ。
ディマンド・プル・インフレに対し、主として供給曲線の左シフトによりもたらされるインフレをコスト・プッシュ・インフレという。供給曲線の左シフトは、原油価格などの原材料価格の高騰や戦乱による設備破壊などにより、生産システムが機能不全となる場合に起きる。この場合、生産量が減ってしまうので(Y→Y'')、物価の上昇と失業の増大が同時に起きる場合が多い。こうした状態をスタグフレーションと言う。
物価上昇の速さによる分類では、物価上昇が徐々に進むクリーピング・インフレ、年率数10%程度で進むギャロッピング・インフレ、非常に急速に進むハイパー・インフレなどに分類される。ハイパー・インフレはほとんどの場合、財政赤字を紙幣の増刷などでファイナンスするという「禁じ手」を使うことにより、貨幣に対する信認が失われた場合に起きる。第一次大戦後のドイツでは、1兆倍を超えるインフレが進んだ。
インフレ率は本来ゼロが理想といえるが、いったんデフレーション(デフレ)に陥ると、経済のさまざまな調節機能が働きにくくなり、景気悪化が加速しやすくなることから、小幅のプラスを保っていたほうが望ましいとされる。年間1~2%程度の緩やかなインフレであれば、インフレの社会的コストは比較的小さいとの考え方が一般的であり、こうした緩やかな物価上昇率が保たれた状態をディスインフレーションという。

【参照キーワード】

デフレーション




(c)2009 A&A partners/TMI Associates/ Booz&Company(Japan)Inc./ Meiji Yasuda Insurance Company
日経BP社
「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
JLogosID : 8516805