100辞書・辞典一括検索

JLogos

28

外部性
【がいぶせい】


Externality

市場取引の過程で、ある種の副作用のような事象が生じることにより、市場メカニズムがうまく働かないことがあるが、この副作用のことを外部性という。外部性は、他の経済主体に便益や費用を与えるが、与える側にそれを考慮するインセンティブがない時に生じる。外部性は、正の外部性(外部経済)と負の外部性(外部不経済)に大きく分けることができる。正の外部性は、他の経済主体に便益を与える場合であり、例としては新技術の開発があげられる。新技術の開発は、開発者に特許料などの便益をもたらすだけでなく、それを利用する人間にも便益を与える。ただ、開発者は利用者の便益ではなく、自らが得る特許料などの便益のために新技術の開発を行うかどうかを決定する。負の外部性は他の経済主体に費用を生じさせる場合であり、例としては環境汚染があげられる。生産の増加とともに環境汚染が増大したとしても、汚染を発生させている生産者は、費用を払ってまで、その汚染を削減しようとするインセンティブを持たないことが多い。そのため、通常は政府が外部性を相殺させるような課税(ピグー課税)や規制等によって市場に介入することが必要になる。一方で、コースの定理排出量取引は、こうした問題が政府の介入なしに市場メカニズムの中で解決されうる可能性を示している。
より具体的には、総需要外部性やネットワーク外部性という考え方がある。総需要外部性とは、総需要との関係で外部性を説いたもので、ニューケインジアンが価格の硬直性を説明する際に用いるメニューコスト理論の裏づけとして利用された。例えば、いくつかの企業が需要不足から値下げをしたとすると、平均的な物価水準がわずかに引き下げられ、実質貨幣残高が増大し、総需要を増やすことになる。この総需要の増加によって、値下げをしなかった企業の商品も売れることになる。そうすると、値下げをした企業よりも、値下げをしなかった企業の方が得をしたことになる。そのため、経済全体を考えれば値下げが最適な行動でも、個々の企業にとって値下げは最適な行動とはならない場合がありうる。
ネットワーク外部性とは、利用者数が増えれば増えるほど、その財やサービスから得られる便益が多くなるという考え。代表的なものに電話の加入があげられる。電話の加入は、1人目の加入者に対しては何の便益ももたらさないが、2人目が加入することによって、その2人目の加入者だけでなく、1人目の加入者にも便益が広がる。加入者が増大していけばいくほど、便益が増大し、電話の価値を高めることになる。ネットワーク外部性が働く財やサービスには、クリティカルマスと呼ばれる普及率が存在する。このクリティカルマスに達するまでの普及には多くの費用を必要とするが、その水準に達すれば、加入者の増加が新たな加入者の増加を生むフィードバックが起こり、劇的に普及率が高まる。最近では、携帯電話の普及にこの典型的な動きが見られた。
【参照キーワード】

コースの定理
排出量取引
ニュー・ケインジアン




(c)2009 A&A partners/TMI Associates/ Booz&Company(Japan)Inc./ Meiji Yasuda Insurance Company
日経BP社
「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
JLogosID : 8516810