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加速度原理
【かそくどげんり】


Acceleration Principle

投資決定理論の1つで、設備投資は生産量の増分に比例して増加するという理論。資本設備の量と生産量との間に比例的な関係があることが前提で、この前提下では、生産設備の増分である設備投資は、生産量の増分に比例することになる。生産量の増分をΔYとすると、投資Iとの関係は、I=vΔYによって示される。vは加速度係数と呼ばれる。加速度原理は、景気の変動時は、投資の変動が消費の変動より大きくなって景気変動を加速するという、現実に観察される現象を説明するために考え出された。単独では景気循環が起きる説明にはならないが、乗数理論と組み合わせることにより、景気循環を説明するツールとして発展した。ポール・サミュエルソンの理論が代表格である。例えば、1個1000円の半導体を年間100万個売り上げる電子部品会社Aがあったとする。A社は、100万個の半導体を生産するために、1台10万個製造できる半導体製造装置(1台1億円)を10台保有している。耐用年数が10年とすると、平均して1年に1台は廃棄される。この例で見ると、毎年の半導体の売上が100万個で変わらない場合、毎年の設備投資額は廃棄した1台を補充する1億円にとどまる。しかし、なんらかの理由で売上が10万個増加して110万個になった場合、設備投資額は10万個を製造するための1台と、廃棄分の1台を補充するための2台分、2億円となり、前年の倍に増える。しかし、次の年に売上が110万個で変わらなければ、設備投資額は廃棄分の1台を補充する1億円にとどまり、前年比マイナス50%の減少となる。売上が10万個減れば、廃棄分も補充しないため、設備投資はゼロとなる。こうなると設備に張り付いていた人員はリストラ、半導体製造装置を製造する機械メーカーは倒産の危機に直面するということになる。このように、設備投資の変動が景気を良い方向にも悪い方向にも加速させる。加速度原理への批判としては、資本設備の量と生産量との間に比例的な関係があるとするのは無理があり、技術進歩などによって両者の関係は変わっていくとするもの、資本財の調達計画から設備投資の実行までのタイムラグを考慮していないとするもの、投資のための資金調達の側面を考慮していないとするもの、設備稼働率が100%であることを前提としており、過剰設備が存在する場合は当てはまらないとするものなどがある。




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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