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貨幣錯覚
【かへいさっかく】


Money Illusion

名目賃金が増加すると、たとえそれが物価の上昇によるものであって、実質所得は増加していなくても、人々は実質所得が増加したと錯覚し、消費を増加させるという考え。労働者は名目賃金の低下は嫌うが、貨幣錯覚があるため、実質賃金の低下には気付かないことが多い。例えば、物価が変動していない時の名目賃金の1%の賃下げには抵抗感を示すが、物価が2%上昇している時の名目賃金の1%の賃上げは、実質賃金ベースでは1%の賃下げになるにもかかわらず、受け入れてしまう傾向がある。また、物価上昇率が1%の時に名目賃金が1%上昇した場合、実質賃金は上昇していないにもかかわらず、人々は実質賃金が上昇したと錯覚し、労働量を増加させる。言い換えると、実質賃金が不変でも、物価が上昇すれば名目賃金が上昇し、労働供給量を増やすことになる。つまり、物価が上昇すれば労働量が増え、物価が下落すれば労働量が減少することになり、物価と労働量の間には正の相関関係が存在する。労働量が増加すると失業率は低下するため、物価と失業率の間には負の相関関係が存在することになるが、これはフィリップス曲線で示される関係である。ミルトン・フリードマンは、この錯覚は長期的には解消されるため、負の相関関係は崩れてしまい、失業率は長い目で見れば供給側によって決定される自然失業率に等しくなることから、長期のフィリップス曲線は自然失業率の水準で垂直になると主張した。
【参照キーワード】

フィリップス曲線




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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