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金融政策
【きんゆうせいさく】


Monetary Policy

中央銀行が、主として市中への通貨供給量をさまざまな手段で調節することにより、責務である物価の安定、および景気の安定を図ろうとする政策。広義では、金融システムの健全性や安定性を確保するための諸施策をも含めて金融政策と呼ぶことがあるが、後者は通常プルーデンス政策と呼ぶ。金融政策の伝統的な手段としては、金利調節、公開市場操作、預金準備率操作、窓口指導があげられる。金利調節は、短期金利を操作することで通貨供給量を調節する手段である。対象となる短期金利には大きく公定歩合(中央銀行から市中銀行への貸出金利、現在、日本では基準貸付利率と呼ぶ)と、銀行間レートに大別されるが、後者は市場金利であることから、中央銀行が直接金利を決めるのではなく、公開市場操作等を通じて目標水準に誘導するという方法をとる。公開市場操作は、中央銀行が金融市場との間で手形や債券を売買して、通貨供給量を調節する手段で、各国の中央銀行で主流となっている方法である。オープン・マーケット・オペレーションの邦訳だが、オペレーション、さらに略してオペと呼ばれることが多い。中央銀行が手形や債券を買う場合を買いオペ、売る場合を売りオペという。買いオペは資金供給につながることから金融緩和、売りオペは引き締めとなる。
預金準備率操作は、預金準備制度(金融機関が預金の一部を中央銀行に預ける制度)において、その預金に対する預入率を操作する手法で、準備率を上げれば引き締め、下げれば緩和となる。金利政策の補完手段に位置づけられるが、先進国の中央銀行では主流とはなっておらず、日銀は1991年を最後に実施していない。また、準備率の変更ではなく、準備額を積み立てる速度を調整することにより微妙な金融調節を行う手法もあり、こちらは現在でも行われている。窓口指導は、金融機関の貸出量を中央銀行が直接指導する手段。日本では、資金需要が旺盛な高度成長期に、金利調節を補う手段として行われたが、市場の自由化の進展により歴史的役割を終え、1991年に廃止された。規制金利色が強く、金利チャネルが必ずしも有効に働かない新興国では、預金準備率操作、窓口指導とも積極的に活用されている。
金融調節の操作目標という視点からは、短期金利に目標を置く場合と、資金の量(マネタリーベースマネーサプライ)に置く2つのパターンに分けられる。短期金利に置く場合、操作対象となる金利を政策金利と言う。政策金利公定歩合とする場合は間接的に市場金利に影響を与える手法、銀行間レートの場合は直接市場金利に働きかける手法を選択したことになる。現在、多くの中央銀行が操作目標としているのは銀行間のオーバーナイト金利で、日本の無担保コール翌日物、米国のフェデラルファンドレートはいずれもオーバーナイト金利である。従来は多くの中央銀行が公定歩合を操作目標としていた。これは、中央銀行の独立性が低い時代には、間接的な目標の方が金融政策の自由度を確保しやすいという理由が大きいと言われる。近年では、多くの銀行が政策金利を銀行間レート、あるいはそれに近い市場金利に変更している。資金の量を操作目標とする手法はめったに採用されることはないが、米国において1979年から1982年にかけ、ボルカーFRB議長(当時)がインフレ抑制のため、非借入準備を操作目標としたのが代表的な例である。日本では、2001年から2006年にかけ、ゼロ金利下でさらなる金融緩和を行う手段として、操作目標を無担保コールレートから日銀当座預金残高に変更するという、いわゆる量的緩和策を採用した。
【参照キーワード】

→基準貸付利率
プルーデンス政策
量的緩和政策




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日経BP社
「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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