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厚生経済学
【こうせいけいざいがく】


Economics of Welfare

社会の厚生(welfare)を問題とし、その最大化と、効率的な分配のあり方を分析する経済学の分野。A・C・ピグーの『厚生経済学』The Economics of Welfare(1920)に始まるとされる。ピグーは、厚生のなかで直接・間接に貨幣で測定できる部分を「経済的厚生」と呼び、経済的厚生は、&wc1;国民所得の平均量が大きければ大きい、&wc2;貧困層に帰属する国民所得の量が大きいほど大きい、&wc3;毎年の国民所得の量と、貧者に帰属する取得分の変動が小さいほど大きいという、いわゆる「厚生経済学の3命題」を提唱した。このうち、第2命題が所得の再分配を根拠づけた命題だが、効用の数値としての絶対量の測定可能性や、個人間での比較可能性が前提となっていることが批判され、その後の新厚生経済学の発展につながっていくことになる。
厚生経済学は、効用の大きさが数値として測定可能とする「基数的効用」の立場を捨て、数値としての測定は不可能で、したがって個人間の比較もできないが、順位付けだけは可能とする「序数的効用」の考え方をとる。主として、「パレート最適」や、補償原理(利益相反が解決できない時に、なんらかの補償を仲介させて両者が是認しうる状態に修正しようとする考え方)などの理論を中心に再構成された。新厚生経済学の考え方で、「競争によって達成される任意の市場均衡はパレート最適点であり、任意のパレート効率的な配分は競争による市場均衡として達成される」という命題を「厚生経済学の基本定理」と呼ぶ。これを確立したケネス・アローは1972年にノーベル経済学賞を受賞した。
【参照キーワード】

パレート最適




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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