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構造改革
【こうぞうかいかく】


Structural Reform

日本経済の中長期的かつ安定的な成長を目指すにあたり、障害となっている制度、規制、システム等を、政府主導で改善していこうとする試み一般を指す。「聖域なき構造改革」をスローガンとして掲げた小泉政権の誕生(2001年4月)により広まった用語。ただし、もともと確たる定義があるわけではないため、何をもって構造改革と定義づけるかは、論者によってかなり幅がある。一国の成長力向上のためにもっとも重要なのは生産性の向上である。生産性を上昇させるためには、一国の限られた資本の効率的な活用が必要となる。したがって、構造改革の重要な柱は、一国の資本を生産性の低い部分から高い方へ政府主導で効率的に配分しようとする試みと言うことができる。一般的に官業は利益拡大へのインセンティブがないことから非効率的な場合が多く、とりわけ日本の場合は官業に大量の資本が張り付いていることが大きな問題となっていた。そこで、小泉内閣は、「民にできることは民に」、「官から民へ」のスローガンのもと、郵政民営化や、道路公団民営化などを推進した。
また、日本では政府による種々の規制が民間資本の活動を制限し、効率的な資本配分を妨げている面が大きい。小泉内閣は総合規制改革会議(のちの規制改革会議)を設置し、必要な改革についての検討を委ねた。もっとも、規制に守られている側にとっては、規制改革は既得権益をはく奪される結果になる。したがって、規制改革は政官財一体となった反対にあうことが多い。改革推進のため、政府は「構造改革特区」を設置し、特定地域で規制改革を先行させることで地域活性化につなげるとともに、成功例については全国展開する試みなども行っている。また、小泉内閣発足直後の段階では、バブル崩壊とその後のデフレ不況などを通じて蓄積された負の遺産の整理が、構造改革としてイメージされることが多かった。例えば、金融システム立て直しのため、銀行に対し厳しい資産査定と強制的な資本注入をセットで行い、不良債権処理を強力に推進したことなども構造改革の重要な柱として位置づけられていた。行財政改革も構造改革の一環に位置づけられる。小泉内閣は新発国債を30兆円以内に抑える等の財政改革や、国と地方公共団体の間の行財政システム改善のため、国庫補助負担金縮減、税源の移譲、地方交付税の見直しを一体で行ういわゆる「三位一体の改革」等を推進した。公務員の定数削減、天下り禁止などの公務員制度改革や、年金・医療等の社会保障制度改革も広い意味では構造改革に含めることができる。多くの改革メニューはいまだに現在進行形だが、その一方で、行き過ぎた拡大が格差拡大を招いた等の批判がなされることも多い。




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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