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在庫循環
【ざいこじゅんかん】


Inventory Cycle

在庫投資の増減によってもたらされる景気変動のこと。アメリカの経済学者ジョセフ・キチンが発見したことから、キチン・サイクルとも呼ばれる。経験則的に、2~3年に1度の周期で循環すると言われている。在庫循環を視覚的に捉えるものとして在庫循環図がある。在庫循環図には幾つかの描き方があるが、一般には縦軸に在庫の伸び、横軸に出荷の伸びをとって両者の関係を表すことが多い。日銀の金融経済月報でもこうした手法が取り入れられている。在庫循環が一回転するのにあわせて、在庫循環図も反時計回りに一回転する。例えば、景気後退期に在庫削減を進めた結果、在庫量がその時点の出荷量に見合うと考えられる程度まで減少すると、企業はそれまでの減産ペースを緩和し、徐々に増産へと舵を切り始める。こうした生産の持ち直しが原材料などの新たな需要を生み出すため出荷は次第に増加していく。しかし、この時点で企業は先行きに対する慎重姿勢を崩していないため、生産を積極的に拡大するまでには至らない。その結果、予想外に在庫が減少する「意図せざる在庫減」が生じる。その後、在庫不足感の高まりから企業はようやく本格的な増産に転じ、積極的に「在庫積み増し」を行うようになる。しかし、生産拡大の結果、企業がその時の出荷量に見合うと考える程度まで在庫量が増えると、企業は少しずつ生産を抑制し始める。生産の抑制によって原材料など他の需要が減少するため、出荷は次第に減少していくが、この時点で企業は先行きの需要動向に対してさほど悲観的な見通しを持っていないため、生産を大きく削減するまでには至らない。その結果、予想外に在庫が増加する「意図せざる在庫増」が発生する。その後、企業は在庫過剰感の高まりからようやく本格的な減産に転じ、「在庫調整」を進めていく。在庫循環では、「在庫調整」から「意図せざる在庫減」への移行期に景気の「谷」が、「在庫積み増し」から「意図せざる在庫増」への移行期に景気の「山」が存在すると考えられている。




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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