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サブプライムローン
【さぶぷらいむろーん】


Subprime Mortgage

米国における、信用度の低い借り手に対する住宅ローンの総称である。代表的な商品の1つに、インタレスト・オンリー・ローンがある。返済当初は金利分の支払いだけで済むものの、そうした優遇期間(2~3年が主流)が終われば、金利(優遇期間中は固定金利だが、その後変動金利に変わるものが多い)に加えて元本の支払いが始まることで返済額が数倍に膨らむ商品である。サブプライムローンは、ITバブル崩壊後の緩和的な財政・金融政策や手厚い住宅税制などを背景に住宅ブームが生じたことで、2004年以降、急拡大した。証券化技術の進歩により、貸出債権のオフバランス化が可能となったため、貸し手のリスク軽視姿勢が強まったことや、将来も住宅価格の値上がりが続くとの見方が広がり、値上がりした住宅を担保に新たなローンを組み直すか、住宅を売却してローンを返済すれば良いという安易な考えが横行したことが、こうしたローンを助長する要因となった。しかし、2006年はじめ頃からサブプライムローンの延滞率が上昇し始めたことで、サブプライムローン問題(危機)が表面化する。
同問題は、2つの局面に分けて考えることができる。まずは、サブプライムローンの焦げつきが急増したことで、それまで堅調だった住宅市場が調整に転じた局面である。同ローンの延滞増加の要因は、2006年に入って、インタレスト・オンリー・ローンの初期優遇期間が終了しはじめたこと、同ローンは優遇期間終了後に変動金利に変わるものが多かったため、2004年6月以降連続で行われたFRBの利上げなどが重しになって返済額が急増したことなどである。住宅市場の過熱感を警戒した当局が貸出基準の厳格化に動いたことも下押し要因となって、住宅市場は調整局面に転じた。第二段階は、住宅市場の落ち込みが、貸出債権の証券化というスキームを通じて金融問題に発展した局面である。住宅ローンは、従来からRMBS(Residential Mortgage-Backed Securities)という証券化商品に束ねられて販売されてきたが、金融技術の発達に伴い、RMBSが再証券化されてCDO(Collateralized Debt Obligation)に、CDOはさらに再証券化されてCDOCDOCDOスクエアード)にと、次々に姿を変えて世界の投資家に販売されるようになった。しかし、サブプライムローンの焦げつきが増加したことで、これらの証券化商品が連鎖的にデフォルトを起こし、投資していた金融機関の損失が急速に拡大した。市場では、取引相手である金融機関の財務状態に対する不透明感が著しく高まり、結果として信用収縮につながった。
サブプライムローン問題が市場で意識され始めたのは、2007年3月13日にニューヨーク証券取引所が、経営破綻の可能性が高まったとして、米住宅ローン大手のニューセンチュリー・フィナンシャルを上場廃止にすると発表したのがきっかけである。その後、ドイツのIKB産業銀行が、サブプライム関連損失の拡大で政府系金融機関の支援を受けることが決まったほか、仏大手銀行のBNPパリバもサブプライム関連損失の拡大で傘下のファンドを凍結したことなどから、同問題がグローバルに波及していることが判明した。その後、米国をはじめ、各国の政府・金融当局がさまざまな対応策を発表したものの、この流れは収まらず、2008年9月15日、米大手証券会社のリーマン・ブラザーズが経営破綻したことで金融危機が深刻化、世界同時不況につながった。




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日経BP社
「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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