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シニョレッジ
【しにょれっじ】


Seigniorage

政府や中央銀行など、通貨発行主体が得る「通貨発行益」のこと。もともとは、中世の欧州において、貨幣鋳造権者が貨幣鋳造依頼者に課した鋳造費用を超える手数料を指す用語である。シニョレッジの語源は、フランス語の「君主(Seigneur)」とされる。ひとことで通貨発行益と言っても、いくつかの考え方がある。もっとも一般的なのは、「貨幣の表示金額と製造原価の差額」という定義である。紙幣の製造コストは、だいたい券面の0.2~0.3%であり、したがって券面の99.7~99.8%がシニョレッジということになる。日本でも一時話題になった、いわゆる「政府紙幣」構想は、シニョレッジを景気対策の財源にしようという考え方である。中央銀行は通常、通貨発行時にはシニョレッジを認識しない。国債や貸出などの対価を受け取る金融取引として通貨を市場に供給するためで、バランスシート上、1万円札の発行なら1万円が日銀の負債として計上され、資産と負債に同額が立つ。ただ、負債の通貨が無利子なのに対し、対価として保有する国債などからの金融資産からは利息が受け取れることから、利息部分のみがシニョレッジということになる。もっとも、将来にわたって受け取る利息を、同じ収益率を用いて割り引けば1となることから、将来まで見通せば結局発行額の1万円がシニョレッジとなる。
より広義の考え方では、銀行券のほか、中央銀行当座預金債務も中央銀行の発行する通貨とみなし、これらに見合う金融資産から得られる運用益をシニョレッジと捉える考え方もある。シニョレッジは、古来、政府の合法的な錬金術と言われているが、当然ながら、通貨価値の安定が保証されない限り、シニョレッジも保証されない。シニョレッジが別名「インフレ税」と呼ばれていることからもわかるとおり、現実には歴史上の多くの政府がマネーサプライ管理に失敗してインフレを起こした。それが、世界中で中央銀行制度が導入される背景となった。




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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