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成長会計
【せいちょうかいけい】


Growth Accounting

経済成長の要因を資本、労働、技術進歩の3つに分解して分析する手法で、R.ソローの成長理論に基づく。技術進歩は、経済成長に対する資本と労働の寄与だけでは説明できない残差として求められるため、ソロー残差、あるいは全要素生産性(Total Factor Productivity, TFP)と呼ばれる。ソロー・モデルは、新古典派の考え方に基づく代表的な経済成長理論である。より先駆的な業績であるハロッド・ドーマー・モデルが、「ナイフの上の均衡」と言われる通り、均衡成長への到達が困難で、かつ、いったん均衡に達してもその状態が非常に不安定であることを示したのに対し、ソロー・モデルは、長期均衡的な経済成長が実現する「労働者1人あたり資本」の定常状態と言える水準が存在し、初期段階の資本の水準が定常状態を上回っている場合でも、下回っている場合でも、長期的には定常状態に近付き、そこで安定化するメカニズムがあることを示した。
ソロー・モデルでは、資本が定常状態より低い水準にある場合は、比較的速いペースの経済成長が実現することが示される。例えば、第二次大戦後の日本やドイツの急速な経済成長はこれで説明できる。また、貯蓄が投資の原資となることから、貯蓄率が高いほど成長率は急速になる。したがって、民間貯蓄の減少につながるような政策、例えば財政赤字の持続的な拡大は好ましくないとされる。しかし、いずれにしてもひとたび定常状態に達すると、労働者1人あたりの産出はそれ以上増加しなくなり、それ以上の増加は技術進歩によってのみ可能になる。また、経済にとって重要なのは消費の最大化である。上述の「労働者1人あたり資本」の定常状態は、一定の条件のもとで消費水準を最大にするが、この消費最大化の条件を満たす定常状態の水準を「資本蓄積の黄金律水準」という。ソロー・モデルでは、技術進歩が外生的に与えられており、技術進歩が起きる要因自体は説明していない。技術進歩をモデルの中に組み込んだ理論は「内生的成長理論」としてP.ローマーらにより発展を見た。




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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