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貯蓄投資バランス
【ちょちくとうしばらんす】


Balance of Saving and Investment

一国全体の付加価値GDP)は、生産面、分配面、支出面のいわゆる三面等価が実現するが、個別経済主体(制度部門)別に見た場合は当然ながら一致しない。付加価値は主に民間企業によって生産されるが、それが家計に対しては雇用者所得として分配され、そこから直接税や社会保険料、利子の受払を差し引いた残額が可処分所得となって、個人消費や住宅投資などの支出に供されていく。民間企業に対しては、付加価値は営業余剰や固定資本減耗として分配され、設備投資などの形で支出に供される。こうした制度部門ごとの収入と支出の最終的な収支尻が貯蓄投資バランスである。国内の各制度部門の貯蓄投資バランスの合計は、概念上、経常収支に一致する。モノの取引の裏側にはカネの取引があるため、貯蓄投資バランスは、金融資産の純増分と負債・資本の純増分の差額である資金過不足と概念的に一致する。ただ、実際の統計(国民経済計算、SNA)では両者はしばしば大きくかい離する。
日本では、高度成長期以降、1990年代に至るまで、家計の貯蓄投資バランスは、高貯蓄率を背景に大幅な貯蓄超過(=資金余剰)が続いていた。一方、民間企業は設備投資の高い伸びなどを背景に、大幅な投資超過(=資金不足)であった。貯蓄超過主体の家計の余剰資金を、金融機関が投資超過主体の企業部門に橋渡しするというのが、一国全体の典型的なマネーフローの姿であった。しかし、近年では高齢化の進展等に伴い、家計貯蓄率が趨勢的に低下してきた結果、家計の貯蓄超過幅は徐々に縮小している。一方、資本蓄積の進展等に伴い、企業の投資超過幅も縮小し、1990年代半ば以降は逆に貯蓄超過主体に転じている。政府部門は財政支出の拡大に伴い、大幅な投資超過が常態化している。貯蓄投資バランスは、国民経済計算上、かつては貯蓄投資差額と表記されていたが、新体系(93SNA)への移行後は、資金過不足ともども「純貸出(+)/純借入(-)」と表記されている。国民経済計算上の資金過不足は、基礎統計の多くを日銀の資金循環勘定に負っている。また、国民経済計算が年1回の発表なのに対し、資金循環勘定は四半期ごとに発表され、かつ公表数値も多岐にわたることから、金融取引の分析は日銀の資金循環勘定を用いるのが一般的である。国民経済計算と資金循環勘定の制度部門分類は完全には一致しないが、近年、近づける努力が進んできている。
【参照キーワード】

国民経済計算




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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