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ヘクシャー・オリーンの定理
【へくしゃーおりーんのていり】


Heckscher- Ohlin Theorem

国際貿易に関わる基礎理論の1つで、比較優位や比較劣位が生じる理由を、生産要素の豊富さの程度の違い(要素賦存比率の違い)に求めた理論。2国(A国、B国)、2財(X財、Y財)、2生産要素(労働、資本)のモデルを考える。A国は、B国に比し相対的に労働が豊富で、資本が稀少、B国はA国に比し相対的に資本が豊富で、労働が稀少とする。また、X財はY財に比べて資本よりも労働をより多く投入するような財(労働集約財)であり、Y財は逆に資本集約的な財とする。この場合、A国の要素市場では、B国に比し相対的に労働の価格(賃金率)が低くなり、逆に資本の価格(資本レンタル率)が高くなる。したがって、労働集約財であるX財を相対的に安い費用で生産することが可能になり、X財に比較優位を持つことになる。逆にB国は、A国に比し相対的に資本レンタル率が低くなり、賃金率が高くなるため、資本集約財であるY財を相対的に安い費用で生産することが可能になり、Y財に比較優位を持つことになる。したがって、A国とB国の貿易では、A国はX財を輸出し、Y財を輸入することになる。これにより、A国ではX財の生産が増加し、Y財の生産が減少するため、労働需要が増し、資本の需要が低下する。結果として賃金率は上昇し、資本レンタル率は低下する。逆に、B国はY財を輸出し、X財を輸入することになるが、これによりY財の生産が増加しX財の生産が減少するため、資本の需要が増し、労働需要は低下する。結果として資本レンタル率が上昇し、賃金率は低下する。このプロセスを経ることにより、A国とB国の賃金率と資本レンタル率は、生産要素の国際間移動を仮定していないにもかかわらず、最終的には収れんすることになる(要素価格均等化定理)。
ヘクシャー・オリーンの定理から、次の2つの定理が導かれる。
&wc1;リプチンスキーの定理:生産要素の量が増加するとき、その生産要素を集約的に投入する財の生産量が増加し、他の財の生産量が減少する。
&wc2;ストルパー・サムエルソンの定理:ある財の価格上昇は、その財の生産のために集約的に投入される生産要素の相対的価格を上昇させる。
リプチンスキーの定理は、価格を一定として、生産要素を増加させたときの財の生産への影響を論じたもの、ストルパー・サムエルソンの定理は、生産要素の総量を一定として、財の価格が変化したときの生産要素の価格への影響を論じたものである。また、ヘクシャー・オリーンの定理に関わる実証研究として、相対的に資本が豊富なはずの米国が、労働集約的な財を多く輸出していることを示した「レオンチェフの逆説」がある。ヘクシャー・オリーンの定理が成立するためには、A国とB国の生産技術水準が同じという前提が必要であり、現実の経済に簡単に当てはめて考えることはできない。なお、ヘクシャー・オリーンの定理を構築した功績により、オリーンは1977年にJ・ミードとともにノーベル経済学賞を受賞している。
【参照キーワード】

比較優位




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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