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リアル・ビジネス・サイクル理論
【りあるびじねすさいくるりろん】


Real Business Cycle Theory

いわゆる「新しい古典派」に分類される理論。不況とは需要不足の現われではなく、需要と供給は常に一致しており、不況に見えるのは需要と供給の「均衡水準の変化そのもの」であるという考え方をとる。ケインジアンと古典派の最も重要な前提の違いは、価格の十分な伸縮性を認めるかどうかであるが、従来の古典派理論が、「短期的にも価格は伸縮的」とは言わなかったのに対し、リアル・ビジネス・サイクル(以下RBC)理論は、迅速な価格・賃金調整により、需要と供給は均衡(完全雇用)水準に常に一致するとする。需要と供給の均衡水準の変化は、技術革新などの外的ショックによってもたらされ、それが景気循環のような動きとなる。需給が完全雇用水準で均衡しているということは、働きたいと思う労働者は、均衡点の賃金水準においてすべて雇用されていることを意味する。つまり、非自発的な失業者は存在せず、労働量は働く側の態度により決まる。目先は賃金が上昇すると思えば、労働者はたくさん働きたいと思い、下がると思えば、少ない時間働いて残りは余暇にまわそうとするだろう。このような自身を取り巻く環境を、労働者は完全ではないにしろある程度合理的に予測でき、労働と余暇を異なる期間にわたり適正に配分できることを前提とする(労働力の異時点代替)
価格は十分に伸縮的なので、貨幣供給量の変化は物価の上下に直結するものの、実物経済には影響を与えない。したがって、金融政策は有効に機能しない。RBC理論が否定するのは金融政策だけではない。市場が常に均衡しており、経済変動はいわゆる「市場の失敗」ではない。経済変動は不可避というか、むしろ望ましい変化ともいえ、したがって景気変動を政策的手段で均そうとする試みはすべて有害無益であると説く。
RBCモデルの評価は、こうした理論の現実への適合性というよりも、モデルの完成度の高さ、応用度の高さによって決定づけられた。RBCモデルから発展した動学的(確率的)一般均衡(Dynamic Stochastic General Equilibrium, DSGE)モデルは、現代のマクロ経済分析における欠かせないツールであり、主要な研究分野となっている。RBC理論はある意味「純化」の進んだ理論であるために、RBCモデルを土台とすることによって、ケインズ理論古典派理論をいわば同じ土俵のうえで論じることが可能になり、それまでの「ケインジアン対古典派」という教科書的な対立は消滅するに至った。こうしたマクロ経済分析の枠組みや方法論の発展に寄与した功績が評価され、RBC理論の提唱者であるフィン・キドランドとエドワード・プレスコットは2004年にノーベル経済学賞を受賞した。
【参照キーワード】

古典派
→動学的一般均衡モデル




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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