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履歴現象
【りれきげんしょう】


Hysteresis

長期的には、供給サイドの要因が経済の水準を決めるという古典派的な考え方に対し、短期的な需要サイドの変動による影響が長期的にも尾を引き、自然失業率等の長期的な均衡水準自体を変化させてしまうという考え方。ニュー・ケインジアン系の経済学者によって主張されている。例えば、失業期間が長期化することにより、就業に必要なスキルが失われてしまうほか、就業意欲の低下を招く可能性も高まる。また、労働組合は、組合員の賃金確保を優先し、組合員以外の処遇、とりわけ新規雇用の増加にはあまり配慮しない。その結果、組合員の高賃金と、組合員以外の低賃金、および高失業が共存する形となる(インサイダー・アウトサイダー理論)。こうした構造が定着する結果、自然失業率の水準自体が押し上げられる。履歴現象は、欧州の高失業率を説明するためによく用いられる。欧州では1980年代から失業率の上昇が始まった。これは高インフレが終息する過程と同時に起こったが、インフレ率が安定した後も低下しなかった。O.ブランシャールなどが、履歴現象を用いた欧州経済の分析を数多く発表している。
【参照キーワード】

インサイダー・アウトサイダー理論
ニュー・ケインジアン




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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