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コスト・リーダーシップ
【こすとりーだーしっぷ】


Cost Leadership

競合他社よりも圧倒的に低いコストを実現することで業界内で競争優位を確立している状態、あるいは、それを目指すための戦略のこと。ハーバード・ビジネススクールのマイケル・E・ポーター教授が提唱した3つの基本戦略の1つ。ここで言うコストとは、仕入や生産といった製品原価だけでなく、販売やサービス、バックオフィスなどのオペレーションコストを含む、企業のビジネスプロセスのすべてに関わるコストを指す。コスト・リーダーシップを実現するには、通常節約型のコストカットに取組むだけでは不十分であり、競合が模倣困難な低コスト実現のメカニズムを構築する必要がある。
低コストを実現する代表的なメカニズムとして、大量生産や大量出店といった事業規模の拡大により単位あたりのコストが下がる「規模の経済効果」や、作業や業務の習熟度が高まることにより効率が向上する「経験曲線効果」、生産機能の内製化や仲介機能の中抜きなどにより競合とは異なるコスト構造を作りだす「バリューチェーンの再構築」等があげられる。
コスト・リーダーシップを実現することで、競合よりも売価を下げてシェアの拡大を狙うことが可能となる。また、売価を下げなくても、競合よりも大きな利益を享受できるため、事業規模の拡大を狙ったM&Aや設備投資など、自社のコスト競争力をさらに増すための投資を行うことが可能となり、競合に対して持続的な競争優位を確立することができる。
コスト・リーダーシップの実現には、事業規模の大きさや、過去に蓄積した経験が大きな影響を与えるため、必然的に老舗やシェア第1位の企業に向いた戦略となる。しかし最近は、コスト競争力のあるシェア第1位の企業が業績不振に陥っていることも多く、コスト・リーダーシップ戦略が十分に機能していないケースが見られる。典型的なのは、業界内に特定の商品やサービスの提供に特化したカテゴリーキラーが出現し、同じような商品を同じように売るという業界の競争ルールが変わってしまうような場合である。このような場合、業界の競争軸が「コスト競争」から「価値競争」にシフトしており、シェア第1位の企業がさらなる低コストの追求や売価の引下げで対応しようとしても十分な効果が得られない。価値競争の世界においては、コストや売価だけに着目するのではなく、売価と品質や機能のバランス、つまり、顧客価値の最大化に着目した戦略を再検討する必要がある。




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日経BP社
「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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