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産学連携
【さんがくれんけい】


日本においては、研究費ベースで全体の約25%、研究者数ベースで約30%を大学が占めている。この数字からも、大学の研究資源の有効活用が、国全体のイノベーションに影響することが理解される。産学連携とは、このような認識を背景に、大学・企業間での人材および研究活動・成果における交流を整備・活性化する活動を指す。形態としては、&wc1;大学から企業への技術(特許)移転、&wc2;委託/受託/共同研究、および&wc3;インターンシップ等の人材交流、がある。実は産学連携は近年に始まったものではなく、教員レベルでの企業との共同研究や人的交流など、インフォーマルな形で従来より実施されてきた。しかし米国では1980年バイ・ドール法制定以降、日本では1998年「大学等技術移転促進法」(TLO法)策定以降、これらの活動を制度化して管理することで、イノベーションを効率化しようとする動きが進んでいる。
産学連携の動きは、AT&Tのベル研究所(当時)に代表される企業R&D組織内での「クローズド・イノベーション」から、企業間または企業-大学間の垣根を越えて知的資産を求める「オープン・イノベーション」への移行という文脈において重要な役割を担うものである。そのため、産学連携をうまく使いこなせる企業とそうでない企業で「イノベーション格差」が生まれつつある。例えば米国では、大学発特許の比率が高い業界ほど、大学の成果を自社特許に活用する能力の格差が広がっているという。今後、特に医薬品、ITや新エネルギーなど、大学の先行研究が重要な役割を担っているセクターでは、有用な成果をいかに迅速に見つけ、それをいかに自社に取り込むかが、生き残りに不可欠な要素となるだろう。
TLOは、大学の特許・技術を企業に移転するための専門会社であり、上記&wc1;技術移転における最も重要なチャネルの1つである。ただし、TLOはあくまでチャネルであり、単体のビジネスとしては必ずしも成功していない。日本には現在(2009年5月1日時点)、承認TLO(文部科学省および経済産業省に承認されたTLO)が47機関あるが、東大TLO(CASTI)など一部を除いて多くが赤字だと言われている。その主な理由として、大発明でないとコストを回収できない、特許申請から利益を得るまでの期間が長い、という点があげられる。例えば成功例として知られる米国スタンフォード大学のTLOにしても、1990年代のロイヤリティ収入の大半が1970年代のごく少数の大発明によるものだという。
TLO関連の直近の報道としては、京都大学、大和証券グループ、三井住友銀行およびエヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズが共同設立したiPSホールディングス(および同社の知財管理活用子会社)が2009年4月、iPS細胞(人工多能性幹細胞)関連特許をバイオテクノロジー企業2社にライセンス契約した事例があげられる。このケースでは、ノーベル賞級とも言われる有望なシーズに対して、事業化段階の最も初期から企業が参画して事業環境を整備することで、国際的な研究競争を有利に進める意図があると見られる。




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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