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退出障壁
【たいしゅつしょうへき】


ある事業から撤退しようとする際の障壁のこと。たとえ赤字でもその事業を継続せざるを得なくしている理由であり、「引くに引けない」事情のこと。撤退障壁とも呼ばれる。退出障壁は業界内の競争の強さに影響を与える。退出障壁が高い方が、既存業者が退出しにくいため業界内の競争は激しくなる。ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター(Michael E. Porter)教授によれば、退出障壁が発生する要因には、経済的要因(撤退コストが高い、資産の転用が利きにくいなど)、戦略的要因(事業撤退が他部署に与えるマイナス影響があるなど)、感情的要因(経営者のこだわりなど)等があるとしている。
一方で、新たに事業に参入する際の障壁のことを、「参入障壁」という。参入障壁が高いということは、新規参入業者が入りにくい業界であることを意味する。この「参入障壁」と「退出障壁」はそれぞれ別の考え方であるが、業界分析を行うにあたっては、これらを別々に捕らえるのではなく、相互に関連付けて検討することが多い。例えば両障壁の高さがどれくらいかを関連付けて検討することで、その業界の収益性や事業リスクなどの市場特性が分析できる。業界全体の収益性とリスクのバランスで言えば、参入障壁が大きくて撤退障壁が小さい(左下)の市場が最も魅力的であり、逆に参入障壁が小さくて撤退障壁が大きい(右上)市場は、リスクの割に見返りが小さい、魅力度の低い市場となる。
日本の小売・サービス業には、本来は事業継続が困難な低収益の個人経営商店が数多く業界内に残っており、欧米に比べても市場全体の収益率が低い。これは、個人経営商店には、各種の補助金や税制優遇制度があり、廃業するよりも開店休業状態を維持した方が有利な場合が多く、事業撤退のインセンティブが働きにくいことが一因とされる。日本の小売・サービス市場は参入障壁が低い割に退出障壁が高いケースと言えよう。




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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