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トヨタ生産方式
【とよたせいさんほうしき】


トヨタ生産方式とは、トヨタ自動車やそのグループ企業で用いられている生産手法全般のことを表し、その概念は多数のサブコンセプトを包含する。JITカンバン方式、平準化/混流生産、自働化、多能工、カイゼン、ムリ・ムダ・ムラの排除、アンドン/ポカヨケ等がその代表例である。海外においては、リーン(lean:ムダのない)生産方式とも呼ばれる。1980年代にトヨタとゼネラル・モーターズ(GM)の米国での合弁会社NUMMIにおける生産性がそのベースとなったGM工場に比べて飛躍的に向上したことがきっかけとなり、外部での研究が盛んになった。現在では、いくつかの概念を製造分野以外にも応用し活用するケースも目立っている。
国内外の多くの製造業や非製造業がオペレーション改善手段としてその導入を図っており、また現在ではトヨタ生産方式の導入を生業としている個人やコンサルティング会社も多い一方で、必ずしもすべてのケースで目に見える成果が達成されている訳でない。その理由としては、(特に海外で多く見られる現象として)キーワードレベルで熱心に研究されているものの、必ずしも本質的な理解がされていないことや、各社の置かれている事業特性や環境を考慮せず闇雲にトヨタのコピー手法を導入している等のことがあげられる。
例をあげると、カイゼンにより物理的なスペースを削減できたが空いたスペースを特に活用できていない、JITを導入したためにサプライヤー内の在庫が増えたというようなケースなどが報告されている。つまり、トヨタ生産方式は万能ではないのである。企業の目的、製品特性、生産種類数、受注オーダー特性、工程の特性、サプライヤー取引条件等々求められる条件によって、最適な生産方式は異なってくるのであり、キーワードや手法の闇雲な信奉は逆効果な場合さえある。
ただし、トヨタの行っている手法の中で1点だけ、いかなるケースにおいても共通に重要なものがある。いずれの生産方式であっても、この方式を「徹底的に作り込む」ことである。この作り込む能力は「現場」の能力に依存する場合が多い(ここで言う「現場」の概念は広く、生産現場といったケースもあれば、全体システムの設計現場といったケースもある)。作り込む能力とは、言い換えればマネジメントだけでは手が及ばない改善を成し遂げる能力である。現場の能力を高める基本要素は、現場各員のモラルと技能である。トヨタもしくは日本企業の現場のモラルと技能の高さは、長期雇用や企業文化、日本人の人間性によるものとして語られることが多いが、曖昧な分析であり応用が効きづらい。このあたりがトヨタを含めて多くの日本企業が、特に海外での高い現場能力の構築に苦慮している一因であると考えられる。「いかなる環境下」でも現場のモラルと技能を高めることが、トヨタ方式の大きな課題の1つである。




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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