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マス・マーケティング
【ますまーけてぃんぐ】


Mass Marketing

高度成長時代に活発化した大量生産・大量販売・大量広告のマーケティング手法。石鹸などのように「生業」的であった雑貨製品が「工業」的に生産され、テレビや乗用車などの耐久消費財が次々に投入されるという時代には、大量の広告を打ち、販売拠点を大量に確保することが、企業の競争力の源泉を形成していた。しかし、多くの企業が参入して同様の戦略をとり続けたこともあり、マス・マーケティングはその有効性を失っていった。マス・マーケティングでは通常4Pと称されるマーケティング・ミックスのさまざまな手法を使って製品を大量販売しようとしているが、新製品などのプロダクト戦略にしても、広告などのプロモーション戦略にしても、低価格などのプライス戦略にしても、容易に競合に模倣されてしまい、優位性を長期的に維持することは困難になった。流通チャネルなどのPlace戦略に関しては、過去に築いた大きな販売網を維持することがかえって負担となってしまい、利益率のさらなる低下に拍車をかけてしまっている。
他社との差別化を指向しようとすると、ターゲットを狭く絞った商品とならざるを得ないが、マス広告ではターゲット以外の視聴者にも大量に広告を見せてしまうため、マス・マーケティングは投資対効果(マーケティングROI)が低いという問題を生じてしまう。
これにもまして、マス・マーケティングの最大の問題は、「顧客が希少になっている」ということである。高度成長期においては、「3C」(カー、クーラー、カラーテレビ)などをはじめて買う初回購買者が数多く存在し、目新しい食品雑貨製品に関しても初回購買者が数多く存在した。製品に関する知識をあまり持ち合わせていない初回購買者に対しては、企業名や商品名を訴求する広告を大量に打ち、人海戦術的な販売網を通じて売り込むことが非常に有効であったと言える。しかし、消費者が買替え購買のサイクルに入ると、製品判断力が高まっているために、自ら複数製品を比較検討するようになり、広告やセールスマンの「言いなり」にはならなくなった。
さらに最近では、買替え顧客までもが希少になっている。自動車の場合、昔は2年か4年で買い替える顧客が非常に多かったが、今では7年か9年で買い替える顧客の比率も高くなってきているという。さらには、消費の主体となる若年人口が全体として年々減少しており、「顧客の希少化」が深刻化しているのである。こうした状況では、今後数週間・数ヵ月以内に当該商品を購買する可能性のある顧客の比率が少なくなっているために、テレビなどのマス広告を打っても投資対効果が低くなってしまう。
【参照キーワード】

マーケティングROI
→4P




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「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」
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