新語 社会 不動産 434 リースバック(住宅)の注意点【りーすばっくのちゅういてん】 リースバックとは、自宅不動産を事業者に売却して即資金化しつつ、事業者から賃借契約することでそのまま住み続けられる仕組みです。生活環境を変えずに大きな資金を調達できる点や、相続トラブル対策になるなどメリットが多く語られますが、デメリットや注意点などの理解が疎かのままだと、数年後に「こんなはずではなかった」と後悔しかねません。しっかりと事前に仕組みやリスクを理解した上での利用検討が必要です。国土交通省から「住宅のリースバックに関するガイドブック」も公開されています。様々なデメリットはあるもののそれらが許容範囲でかつニーズにマッチしていれば十分ニーズに応える仕組みですが、それ以外の選択肢も含めて検討した上で実行することも重要です。持ち家がある場合の選択肢としては以下の通り幅広い選択肢があります。【持ち家の今後の選択肢】・そのまま住む(リフォームで2世帯化なども)・親族が住む・貸して収益化・建て替える(自宅・賃貸アパート/マンション・賃貸併用など)・デベロッパーを活用(等価交換方式で新築最上階に住むなど)・デベロッパーを活用(事業受託方式で活用丸投げなど)・更地化して別用途で収益化(駐車場など)・売却する(通常仲介売却:数ヶ月かかる場合も)・業者買取を利用する(即資金化できるが安くなる)・自宅を担保に資金調達(借金):不動産担保ローン・自宅を担保に年金形式の資金調達:リバースモーゲージ・空き家にして寝かせる・リースバックなどなど様々。重要な意思決定の場合、後悔しないためには幅広い選択肢から消去法での選択も有効です。その上のリースバック検討において、契約前に知っておきたいポイントは以下の通り。多くの注意点があるため特に重要な点に絞っていますので、検討時はより精査する必要があります。(1)買取額が安い周辺相場とくらべ数割低くなります。業者買取になる上さらに仕組みの利用手数料もかかるため仕方ない点はありますが、安いことを知っておくことが重要です。買取額は業者によって査定額が異なるため複数業者を比較検討することも重要です。(2)家賃が高い売却後賃借契約となりますが、周辺相場と比べかなり割高に設定されるのが一般的です。賃借契約は主に定期賃貸借契約となります(普通賃貸借契約の場合もあります)が、通常の定期契約の期間は2-3年、再契約不可なところを特約で継続可能とするため、契約内容を熟知することが重要です。再契約時の賃料交渉は難しい場合が多いため、周辺相場が下がってる場合さらに割高感が出ます。リースバック利用後10年以上そのままの状況で住み続ける場合は、売却額を総賃料が上回るという状況にもなりうるため、売却額とともに賃料も合わせ総合的な判断が求められます。(3)買い戻し価格が高いリースバック契約の特約等で買い戻し可能となりますが、買い戻し額も高くなります。当初買い戻す予定であっても割高賃料支払いで資産は目減りするため追加投資が必要となります。結果そのまま退去せざるを得なくなる場合もありうるので注意が必要です。(4)相続税が大幅増の場合も財産のうち不動産分が現金に変わるため、その後対策しなければ状況により相続税が増加します。これは元々不動産(土地・建物)の評価額は現金に比べ低く設定され、また親族の相続など小規模宅地の特例という評価額大幅減もあり、これらの控除が消えてしまい相続税が上がるという仕組みです。リースバックによって調達した資金の使途によっては影響ない場合もありますが、結果大きく判断が分かれる点でもあります。(5)相続人リスクが逆に上がる場合も相続トラブルの最大の要因が不動産分割問題のためそのリスクを軽減することはできます。また所有権さえあれば相続人の了解も必要ありません。しかし前項目の相続を踏まえると子どもなど相続人が活用方法を考えている場合もあり「何で勝手に売ったの?」と逆にトラブルに発展することも十分あり得ます。このため事前に相続人への連絡や相談も重要です。(6)倒産や転売リスク業者が居住中に転売したり、倒産の可能性もあります。その場合は競売により第3者が取得することになり、新大家(所有者)との契約になります。原則当初の契約は維持されるものの考え方の違いからトラブルに発展する可能性もあります。業者の体力調査なども必要です。このほか、様々な名目の手数料負担や、改修時の制約や費用負担、退去時の原状回復など様々な点でトラブルになる場合もあるため、すべては「契約内容」を十分吟味することが最重要となります。リースバックの利用は、総合的な財産の観点からすると想像以上に減ります。しかし現生活を維持しつつまとまった資金が調達できるメリットもあります。相続トラブルの軽減につながるのであれば、トラブル発生時の様々な精神的・肉体的・金銭的負担を考慮すれば「お金には代えられないメリット」もあり得ます。ただメリットと感じるケースは実は限定的でもあるため、仕組みを理解した上でしっかりと将来に備えられればと思います。【執筆:家宅整理士・宅建士・FP:小島孝治】 Ea,Inc.「新語」JLogosID : 12665787